わたしはこれまでさんざん主張してきたが、男の欲望は文化を活気づかせる一つの要因だ。男は現実原則をもって生きている。いまの世の中を築き、わたしたちが享楽する贅沢さをつくりだしたのは男たちだ。
読売新聞夕刊に一人の魅力的な男性の写真が載っていた。短髪にサングラス、そしてシックなモノトーンのシャツ。香港あたりの映画スターだろうか?
あるいは、少女の絵が映っているモニターに両手を乗せポーズを取っているところを見ると、この人は前衛アーティストなのだろうか?
が、すぐ横に「萌え」という単語。そう、この人は話題の本『電波男』を書いた本田透氏だった。
……にしても、この人、自分が「モテない」としきりに書いているが、どうして? キモメンどころかイケてるよ。何より色気があるじゃないか。
「OTAKUニッポン」の記事内容も興味深かった。本田氏は、おたくの視点から、現代日本に蔓延る「恋愛資本主義」を痛烈に批判する。そして彼は現実の世界に背を向け、独自の「恋愛至上主義」を貫くのだという。たしかに、そこには、独特の美意識が感じられる。多分、その美意識を貫くことこそが、頽落した現実世界に反旗を翻す意識革命なのだろう。
愛の証。わたしは、わたしの想像界をあなたへの生贄として捧げる──あたかも一束の髪を贈るようにして。おそらくわたしは、そのようにして「真実の愛」に到達するのであろう。
それにしても、小倉千加子氏の意見。ちょっと分析が甘くないか。「恋愛資本主義」のグローバリゼーションが進んで、異性愛男性の一部が二次元に流れ込んだら、「恋愛/結婚市場」から漏れるのはいったい「誰」か。
例えば、人口統計調査で男女比が発表され、女性より男性の方が人数が多いことがわかる。かつては、「その数値」で持って、「結婚できない男」という「観念」が煽られた。しかし、それはおかしい。それが「観念」なのは、異性愛の「組み合わせ」しか想定していないからだ。すべての男女が異性をパートナーに選ぶという前提でしか通用しないからだ。
だいたい「容姿を無視してまで愛してくれる女性は少ない」ことから、即、「晩婚化」の原因を導くのは、いかにも心理学的な「決定論」にすぎない。
愛は自発的に他者に向けられるものであり、恍惚のうちに他者のなかにみずからを失い、奇跡によって自分自身を忘れるが、無私の愛は、勇気同様に、逆行できないものに敬意を表し、未来が現在となる方向に満ち溢れるひとつの道だ。相手に立ち向かう者のように勇気をもってではないが、第二人称の面前に向かう自我として、寛大と愛に満ちている。
(中略)
愛の志向の内容は愛する対象であって、未来ではない! そして他方、愛はまた恒存であり、誠実さだ。
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