HODGE'S PARROT

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『メディカル・レッスン』 Gross Anatomy /1989/アメリカ 監督トム・エヴァーハート

 

 マシュー・モディンが出演している映画はハズレがない。まあこれは僕がマシュー・モディンが好きなので、タイプの男優が出演している映画はいいに決まっている、もっと言えば、グッド・ムーヴィーの条件は男優で決まる、という私的な必要条件を満たしているからだ。

しかしこの映画は、それだけでなく、ストーリーがとても良い。と言っても「独創的」に良い、のではなく、「典型的」に良い、のだ。青春映画のひとつの典型であり、恋人同士の愛情よりも仲間同士の友情を重視した「仲良しサークル」型青春ドラマになっている。どことなく『ビバリーフィルズ青春白書』を思わせる。

田舎のブルーカラー出身の青年ジョー・スロヴァク(モディン)が大学の医学部に入学する。解剖のグループがそのまま「仲良しサークル」になり、彼らは医者になるという夢を目指してハードな勉学に励む。もちろん全員が順風万般というわけにはいかず、成績の落ち込みからドラッグに逃避し遂に夢から脱落する者もいる。妊娠している女性もいる──当然、医者の卵たちの手によって子供は産まれる。そして生もあれば死もある。そういった経験を通して、主人公ジョー・スロヴァクは医師としてあるべき姿を獲得していく。

とにかく「感動」に導くエピソードと伏線は素晴らしく、何度観ても良い気分にさせてくれる。マシュー・モディンの過剰に溌剌とした微笑もとても魅力的だ。いちおうローリーというガールフレンド役がいるのだが、彼女がモディンを独占しないところが良い、そして脱がないところも良い。というより、彼女、どうもモディンのガールフレンド役にそれほど適役には思えない。何よりモディンの小さめの顔に対し、ローリーは顔が大きく、溌剌としたスポーツマンタイプのモディンに対し、ローリーはいかにも勉強家の医学生に見える──つまり服装にしろ仕種にしろセクシーではなく、どうも垢抜けない。しかもモディンはスーザン・ソンタグ似のウッドルフ教授の方との関係も抜き差しならなくなってくる。また、モディンが最も情熱的に振舞うのは、ガール・フレンドに対してではなく、ルーム・メイトが退学処分になったときだ。これは監督がわざと仕組んでいるのだろうか、モディンの魅力を最大限に発揮するために。
だから、こういうところも含めて僕はこの映画がとても好きなのだ。

それと黒人の解剖学の教授役のゼイクス・モカエの魁偉な演技がやけに気になった。それというのも、このゼイクス・モカエがB級ホラー映画『ゾンビ伝説』(The Serpent and the Rainbow)に出演していて、そのことを思い出したからだ。
『ゾンビ伝説』にはとんでもなく忘れ難いシーンがあって、ハイチのヴードー教魔術師であるゼイクス・モカエが、調査にきた学者(もちろん男性)を全裸にして椅子に縛りつけ、股間にスポークみたいな棒を突き刺すという拷問をするのだ。そして最後には反撃され、逆に、金属の棒を股間に突き刺される。俗流精神分析的解釈の真似事をしてみると、金属の棒をペニスに見立てられるのではないだろうか……とすれば。