HODGE'S PARROT

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『レクイエム・フォー・ドリーム』 Requiem for a Dream /2000/アメリカ 監督ダーレン・アロノフスキー

『Requiem for a Dream』という「文字」を最初に見つけたのはCDショップの現代音楽コーナー。クロノス・クァルテットの新譜ということだった。早速聴いてみて、おっ、今度はテクノとのドッキングか、とリズミックで意外にメロディアスな音楽を楽しんだ。
なので、DVDのメイキング篇に収録されているクロノス・クァルテットの録音風景はとても興味深かった──それをモサモサとした言葉で律儀に解説する監督ダーレン・アロノフスキー(笑)。

映画は、人間ここまで堕ちてしまうのか、と思うくらい容赦のない悲惨さを画面に叩きつけ、とても迫力があった──4人の登場人物たちの「夢」が完全に潰え、胎児のようにベッドに蹲る彼らへ「死者のための鎮魂歌」が無残にも鳴らされる……春が欠けた4季、強烈な弦楽4重奏曲──不穏な数字4。

最初は、分割画面やドラッグを使用するシーンの映像なんかがちょっと小賢しいな、と気楽に、余裕を持って観ていたのだが、登場人物たちの「中毒」がもはや再帰不能なところまで行ってしまい、転落へのスピードが加速されたあたりから、のめり込むように画面に食い入ってしまった──観ているこちらまで、その映像に、アディクトされてしまった。

アディクト。何しろジェニファー・コネリーが、ここまで綺麗で、ここまでセクシーだったのかと、ちょっと微妙な気分になったからだ。主役のはずのジャレッド・レトが、そのハンサムなルックスにもかからわず、中途半端に伸びた髪と野暮ったい服のため、それほど魅力的に見えなかったというのも原因があるかもしれない。飛び込んでくるマーロン・ウェイアンズのヌードも、さほどタイプではないためか、ジェニファーの魅力に抗しきれない。

そう、ジャニファーがとても魅力的だったのだ。顔に掛る長い髪、細身であるが手足の長さが際立つ均整の取れた身体、そしてだんだんと「O嬢」的になっていくメイクとその表情。不安になるくらいジェニファー・コネリーが美しく思えてきた。不安……もしかしてジェニファーに感じてる? オレ。

最初は「小賢しい」と楽観していた独特の映像(そして音楽)にいつのまにか「アディクト」され、セクシュアリティを撹乱させられてしまった感じ。その不穏さが病み付きになりそうだ。ヒューバート・セルビー・ジュニアの原作も読んでみたい。