HODGE'S PARROT

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『スリーサム』 Threesome /1994/アメリカ 監督アンドリュー・フレミング

三人は大学の同じ寮に住んでいる。女好きの男スチュワート(スティーブン・ボールドウィン)は、アレックスという女(ララ・フリン・ボイル)が好き。でもアレックスは男好きの男エディ(ジョシュ・チャールズ)が好き。で、エディはスチュワートが好き。三人はとても仲良しなので、誰も傷つけたくない。だからこのちょっと変わった三角関係を維持すべく「共生」を計る。彼らは二人のアダムと一人のイヴ。そこは楽園だった、禁断の果実(セックス)を知るまでは……。

三角関係を扱っていながら、爽やかで、清々しく、後味の良い青春ラヴ・コメディ。語り手は確かにゲイの青年であるが、ストレートな「ゲイ映画」っていう感じではなく──実際のゲイ・セックスは巧妙に避けられている──青春ドラマ仕立ての「セクシュアリティ入門」という感じだろうか(セリフなどに「教育的配慮」が感じられる。「ストレート向けゲイ映画」というのがあるとすれば、こんな作品が選ばれるだろう)。

まあ、日本の小説やマンガにもありそうな「ストーリー」なのだが、ただ、かなり「文学」が引用されるのは、ゲイの青年が文学好き(&映画好き)というだけでなく、さりげない「意味」がありそうだ。
例えば、スチュワートのことを「ホールデン」(もちろんサリンジャーだ)と呼び、アレックスがエディに媚態を晒すところで、エディが読んでいるのがホーソン(当然『緋文字』だろう)。

またエディはフランス映画のクラスを取っているのだが、それはこの映画がトリュフォーの同じ三角関係を扱った『突然炎のごとく』のパロディになっていることを「堂々」と示しているのかもしれない。そういった意味でこの映画、やたらと「記号」が目に付く(寮の壁にはキース・ヘリングの絵が画かれてあった)。ただあくまでも「コメディ」が前面に出ており、そのセンスも良いので、文学や映画の「オタク的知識」が煩わしくなることはない(もちろん意地悪い見方をすれば、ゲイが主演である以上、それに合わせて、文学や(フランス)映画の話題が必須という「ステレオタイプ」が必要だったのかもしれない)。

印象的だったシーンは、クライマックスとも言える三人でセックスをするところで、エディがスチュワートに触れるのを躊躇しているときに、スチュワートが手を握り、体を触らせてやるところ。スチュワートはなんて良いやつなんだ、と思った。