HODGE'S PARROT

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『クッキー・フォーチュン』 Cookie's Fortune/1999/アメリカ 監督ロバート・アルトマン

ミシシッピーという南部の町を舞台にしたせいか、名物の宗教(狂信)と保安官をきちんとプロモートすることを忘れていない。宗教のプレゼンテイターはイヤなおばさんタイプのグレン・クローズ、保安官はハンサムで優男タイプのクリス・オドネル

もちろん僕はキュートな保安官に目が行く。なんといっても保安官の制服はなかなか魅力的だ──腰の部分に下げた銃=男根(あ、また「フロイト」やっちまった。でも警官のコスチュームは軍服と並んで「ユニフォームもののゲイ・ポルノ」の定番だ)。
ジム・トンプスンの小説に出てくる自称ハンサムな保安官ルー・フォードやニック・コーリーも──彼らのイカれぐあいはさておき──さぞかしこんな風に凛々しくセクシーなんだろうと思う。

そのクリス・オドネルの恋人役がリヴ・タイラー。なんだけど、最初に彼女が登場するシーンを見たとき、この役ってブッチのレズビアンなのかと思ってしまった。だってリヴは短髪で野郎っぽいファッション&クルマでキメる。そして仕種態度まで野郎っぽい。だからそのリヴと「ほとんど同じ身長」「ちょっと優柔不断」のキュートなクリス・オドネル──そもそも二人はルックスも似てないか──のラヴ・シーンは「男同士」に見えないこともない(ここってジェンダー撹乱を狙ってるだろ、監督さん)。

こういったハンサム・ガイ、ハンサム・ウーマンの(ラヴ)コメディを幕間に、クッキーという老女の自殺をめぐるメインのコメディーが展開されていくのだが、最後まで観て、ああ、な・る・ほ・ど、と思った。この映画の中では、劇中劇とも言える『サロメ』の舞台が展開されるのだが、これがメインのドラマのキーにもなっている感じがしたからだ。
で、実際にオスカー・ワイルドの戯曲に当たってみたところ、こんなセリフがあった。

黙れ。お前こそ生まず女なのだ。おれの子を産めなかった、それをあの預言者は言ふのだ。おれたちの結婚は本當の結婚ではないと。近親相姦の結婚、やがては禍をもたらす結婚だと……。

オスカー・ワイルドサロメ』(福田恆存訳、岩波文庫


だから、「血液型」についてあれほど注意を向けさせたんだな。そして劇外でもサロメの衣裳を身に着けた「サロメ役」は、劇外でも「首」を所望するんだな、と思った。