HODGE'S PARROT

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『完全犯罪クラブ』 Murder by Numbers/2002/アメリカ 監督バーベット・シュローダー

『運命の逆転』のバーベット・シュローダーで、レオポルド&ローブ事件を題材にしたものなので、もっとデカダンなヤツを期待したんだけどな……。

レオポルド&ローブ事件は、1920年代にアメリカで実際に起きた殺人事件。ニーチェ思想の影響を受けた二人の青年が、自分たちの優秀さを示すため、そのためだけに──とされている──殺人を犯した。二人は同性愛の関係にあり、事態はかなりのスキャンダラスなものになった。
このレオポルド&ローブ事件を扱った映画には、有名なヒッチコックの『ロープ』やトム・ケイリンの同性愛的耽美性を前面に押し出した『恍惚(SWOON)』(これは傑作!)がある。

      レオポルド&ローブ事件に関しては下記のサイトに詳しい。



http://www.leopoldandloeb.com/
Illinois v. Nathan Leopold and Richard Loeb


完全犯罪クラブ』でも同じようにニーチェ思想に被れた二人の男子高校生が、理由なき殺人を引き起こすものなのだが、しかし上記傑作2作品が既にある以上、少し趣向を変える必要があったのかもしれない。そこで登場するのが捜査側のドラマで、サンドラ・ブロック演じる女刑事の活躍に焦点があたる。ただ……

女刑事のトラウマ克服と自己憐憫はもういいよ。と思ってしまうくらい、サンドラ・ブロックの役柄がウザく感じてしまった。だってこれって、過去に何事かのトラウマを持った男が、美しくかつ「都合の良い女」と出会い、自己を再生するパターンと同じじゃないか。今時、男と女の役割をチャンジしたからって……

だいたい、ヒューマン・ドラマではなくて犯罪ドラマにDVというトラウマを持ち出すのなら、 いっそ、そのトラウマゆえに──「稚拙な犯罪」を見破るのではなくて──「完全犯罪」を成立させてしまうくらいの巧妙な「逆説」が欲しかった。つまり徹底して「従」の立場に「見える」者が、死体を見てゲロを吐く弱さやブロックの命を救うことも含め、実はそれが徹底して冷静で冷酷なプログラムの一部であったような。
これじゃ、せっかくの「世紀の大事件」も女刑事の自己再生ドラマに奉仕しているだけの、単なるエピソードに貶められてしまっている。まあ最初からそういった視点で観れば、それはそれで良く出来た娯楽作品にはなっているが。