HODGE'S PARROT

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ロベルト・シドンのスクリャービン



ブラジル出身のピアニスト、ロベルト・シドン(Roberto Szidon、b.1941 -)によるアレクサンドル・スクリャービンピアノソナタ全曲集を聴いた。録音は1970年代前半──でも、古さをまったく感じさせない。

Complete Piano Sonatas

Complete Piano Sonatas

CDのカヴァーに描かれているダイヤモンドのように、まさにクリアカットな演奏だった。硬質な音。鋼鉄の音。メリハリがあって、低音も気持ちよいくらいガツンと鳴らされる。なんといっても響きに重量感がある。後期の、ややこしく込み入った構造の音楽でも──例えば《白ミサ》&《黒ミサ》ソナタや10番などでも、シドンのピアノは抜群の冴えをみせ、音楽はドラマティックに処理される……なんとパワフルな《白ミサ》なんだろう、なんと輝かしい《黒ミサ》なんだろう。このテクニカルでメカニックな冴えが、実に快感だ。こういうダイナミックで「打撃系」のスクリャービンって好きだな。
とくに第1番の第3楽章の壮絶さ。この重低音。スクリャービンのエクスタシーは、神秘的な和音にあるのではなく、力(パワー)の漲った重低音にある……と言いたくなる。第2番の第2楽章、第3番の第4楽章も同様だ。
しかも、この三枚組のCDには、通常の10曲のピアノ・ソナタ以外に、作品番号のない《ソナタ 嬰ト短調》(1886)と《ソナタ変ホ短調》(1887-89)、《幻想曲ロ短調》Op.28 が収録されている。これらの音楽がもつショパン風のロマンティシズムも──パワーアップされたショパンとでも言いたいくらい濃厚で壮絶で──とても印象的だった。


ロベルト・シドン、気に入った。他に手に入りやすいシドンのディスクは、ガーシュインエドワード・マクダウェル、チャールズ・アイヴズ、ヴィラ=ロボスらアメリカの作曲家のピアノ曲集、フランツ・リストの《ハンガリー狂詩曲》あたりか。後で聴いてみたい。

Piano Music of the Americas

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19 Hungarian Rhapsodies

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