あの幻のミステリー、ヘレン・マクロイ(Helen McCloy、1904 - 1994)の『幽霊の2/3』(Two-Thirds of a Ghost、1956)が新訳で創元推理文庫より刊行される。via.BaddieBeagle さんより。
Two-Thirds of a Ghost by Helen McCloy / Vintage Mystery Covers
[東京創元社]
しかも『殺す者と殺される者』(The Slayer and the Slain、1957)も新訳で登場だ!
『幽霊の2/3』は本当に見たことがなくて、まさしく幽霊本だった。もちろん読んだことがない。『殺す者と殺される者』はどーしても手に入らなかったので図書館で取り次いでもらって、なんとか読むことができた。これは面白かった。まあなんとなく予想がつく結末なのだが、それでも、マクロイならではの仄暗い雰囲気がとても魅力的だった。
あとは……『暗い鏡の中に』(Through a Glass Darkly、1950)だな。これも図書館で借りて読んだのだが、何よりも「分身」(ドッペルゲンガー)のテーマにワクワクドキドキハラハラしたのを覚えている──だって自分の分身に殺されるなんて!*1 トリックにニアミスするならば……そうか、あれは「ジェンダー」と関係があるのだな、と、いまさらながら思った。『暗い鏡の中に』も、ぜひ同様の措置を願う。
ところで、『Two-Thirds of a Ghost』始めヴィンテージ・ミステリのカヴァーを集めているGJな上記の Flickr にマーガレット・ミラーもあった。とりわけ『殺す風』(The Soft Talkers、An Air That Kills)のカヴァーに目を惹いた。小説のクライマックス──犯人が「罪を血で洗い清めた」と傷跡の走る手首をさしだしながら告白するシーンのもので、あの物語の空恐ろしさを見事に表わしている。
The Soft Talkers by Margaret Millar / Vintage Mystery Covers
おれたちは、わびしい道をいっしょに歩いてきたんだ。この最後の道が格別につらいわけでもあるまいよ。
マーガレット・ミラー『殺す風』(吉野美恵子 訳、創元推理文庫) p.362 *2
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*1:エドガー・アラン・ポーの『ウィリアム・ウィルソン』もそんなストーリーだったな。
*2: