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ゲザ・アンダの《クライスレリアーナ》と《ダヴィッド同盟舞曲集》


ゲザ・アンダの芸術~ドイツ・グラモフォン・レコーディングス(4枚組)

ゲザ・アンダの芸術~ドイツ・グラモフォン・レコーディングス(4枚組)

Brilliant レーベルによる4枚組の『The Art Of Geza Anda』。ドイツ・グラモフォンからのライセンスであるようだが、そのわりには、これまで見かけたことがなかった。どうしてこんな名演が、しかも天下のイエロー・レーベルの録音なのに、埋もれていたのだろう。
そう、このゲザ・アンダ(Géza Anda、1921 -1976)の演奏はとてもよかった。ここで「感動」という言葉を素直に使いたい。ベートーヴェンの《ディアベリ変奏曲》やシューベルトピアノソナタ第21番、ショパンの《24の前奏曲》他、フランツ・リストの練習曲&《メフィスト・ワルツ》も収録されているが、なんといってもロベルト・シューマンの作品、とくに《クライスレリアーナ》と《ダヴィッド同盟舞曲集》が素晴らしかった。
あまり、音楽の理念がどうのこうのとかいった「ヤバイ哲学者」みたいなことは言いたくない。だからちょっとだけ。
例えば《クライスレリアーナ》の第7曲 Sehr rasch(ひじょうに速く)、あのシューマンの作品の中で最も激情的な音楽なのに、あんなにスピードを出しているのに、どうしてあれほど美しい音を出せるんだ? それに、この曲集で僕の一番好きな第8曲 Schnell und spielend(急速に戯れるように)の自由自在なテンポにも凄味を感じた。ゲザ・アンダって本当に凄いピアニストだ。
そして《ダヴィッド同盟舞曲集》。明快で現実的な音で始まるのだが、次第にシューマンならではの奥深いロマンティックな世界に引き込まれていく。最後から二番目の曲 Wie aus der Ferne(遠くからのように)の、フロレスタン(F)とオイゼビウス(E)の署名の入った音楽──第2曲 Innig(心をこめて)が回顧され、そして急激に情熱が高まっていく曲だ──を聴いて、目頭が熱くなった。感動した。それだけだ。

いつの世にも
喜びは悲しみと共にある。
喜びにはひかえめであれ。
悲しみには勇気をもって備えよ。




ダヴィッド同盟舞曲集 [ウィキペディア] より