HODGE'S PARROT

はてなダイアリーから移行しました。まだ未整理中。

雄弁術/The Art of Oratory



クーリエ・ジャポン』2009年2月号を買ってきた。

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2009年 02月号 [雑誌]

COURRiER Japon (クーリエ ジャポン) 2009年 02月号 [雑誌]

何よりも、バラク・オバマイリノイ州シカゴ、グラントパークでの勝利演説”The Hope of a Better Day”が、英文字幕付きで収録されているDVDが付いていること。さらに、そのオバマのスピーチを、スピーチ専門家のマックス・アトキンソン博士/Dr Max Atkinson が解説・分析しているのが、いい──それにアトキンソン博士ってブロガーだったのか(後でじっくり読もう)。
[Max Atkinson]


で、アトキンソン博士の「スピーチ分析」と一緒に、「オバマは演説の大部分を自分で書く」という『インディペンデント』の記事が載っているのだが、ここに「雄弁術」の極意が簡潔に記されおり、即効で理解できる──そして即効で使えそうだ。
その極意(技法)とは、

  • 対照法:例)「私はシーザーを葬りに来た。称えるためではない」(古代ローマの政治家マルクス・アントニウス
  • 3点列挙法:例)「教育、教育、そして教育だ」(トニー・ブレア前英首相)
  • 対照法と3点列挙法の組み合わせ:行動を3点列挙したうえで、1、2点目と3点目を対比させるなど。例)「我々はそのために交渉し、そのために犠牲も払う。だがそのために屈することはない」(ロナルド・レーガン米大統領

この他に、頭韻法や反復法、比喩法や逸話を加えることにより「魅力的なスピーチ」ができあがる──「修辞技法をたくさん使えば使うほど、聴衆の心をしっかりとつかむことができる」のだという。ふむふむ。

Lend Me Your Ears: All you need to know about making speeches and presentations

Lend Me Your Ears: All you need to know about making speeches and presentations


そしてこれらの「技法」(Art)を、オバマが実際にどのように演説が取り入れているのか。それをアトキンソン博士が解説している──博士によれば、オバマは対照法と3点列挙法の2つをさまざまな形で組み合わせる修辞技法を好んでいるという。こちらも、後でじっくりと読んでおきたい、DVDを見聞きしながら。


そういえば……アリストテレスは『弁論術』で、次のようなことも重要な技法だと記していたな。

演技的要素──声 語りにおける演技は音声においてなされる。すなわち、それぞれの感情に合わせて、どのように声を用いるべきであるか、例えば、どんな時には大きな声で、どんな時には小さな声で、またどんな時に中くらいの声で語るか、ということや、どのように声の調子を用いたらよいか、すなわち高い調子でか、低い調子でか、それともその中間の調子で語るべきか、ということ、そして、これらの声量や調子に合わせてどのようなリズムを用いるのがよいか、ということである。
つまり、考慮する点は三つ、すなわち、声の大きさ、調子、リズムである。それゆえ、劇の競技で賞を手にするのは、こらら三つの点をよく心得ている人である、と言ってよいであろう。そして、劇の競技においては、現在、役者のほうが作者よりも大きな力を発揮しているのであるが、国家公共の場における競技(議会弁論や法廷弁論)でも、市民たちが能力を欠いているために、これと同じようなことが認められるのである。




アリストテレス『弁論術』(戸塚七郎 訳、岩波文庫) p.305-306

弁論術 (岩波文庫)

弁論術 (岩波文庫)









[関連エントリー]