HODGE'S PARROT

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「シューベルトの」幻想 / White on White



やっぱり……アドルノって嫌いかもしれない(笑)。
最後の休みなので──昨日はバーゲンで疲れたので──今日はじっくりと大好きなシューベルトの音楽を聴いた。
まずは、ルノーゴーティエ・カプソンとフランク・ブラレイによる《ピアノ三重奏曲》。

Schubert: Piano Trios Nos. 1 & 2

Schubert: Piano Trios Nos. 1 & 2


マウリツィオ・ポリーニの演奏で、ピアノソナタ第20番イ長調 D.959。とくに第二楽章がジーンとくる。

Franz Schubert:Klaviersonaten D 958 & D 959

Franz Schubert:Klaviersonaten D 958 & D 959


マティアス・ゲルネ&グレアム・ジョンソンの歌曲集《冬の旅》。

Compl. Songs Vol. 30. Winterreise

Compl. Songs Vol. 30. Winterreise


そしてヴァレリー・アファナシエフによる、ピアノソナタ18番《幻想ソナタ》 D.894。長い、ひたすら長大な演奏……そのジャケットカヴァーには、カジミール・マレーヴィチKazimir Malevich、1878 - 1935)*1 の『白の上の白』(White on White)──純粋に抽象的な、シュプレマティスム絵画──が使用されている。

シューベルト:ピアノソナタ第18番

シューベルト:ピアノソナタ第18番

「私には、あたかも私は街はその方向にある事を知っているかの如く、なのである。」──「私には、あたかも「シューベルト」という名前はシューベルトの作品と彼の顔にぴったりであるかの如く、なのである。」〔しかし、何れの場合にも、私の思い違い、ないしは幻想、なのである。〕




ウィトゲンシュタイン哲学探究』(『哲学的探求』読解、黒崎宏 訳・解説、産業図書より 第2部 p.90)*2

MALEVICH art for children

ウィトゲンシュタインは『確実性』において、「或る命題が真理であることは確実である(the truth of a proposition is certain;)」(『確実性』第193節)と言うことは何を意味しているか、と問うている。
「或る命題が真理であること」という言い方から、彼はそこにおいて「このドアは鍵がかかっている、ということは確実である。(It is certain that the door is locked.)といった文を考えているのであろう、と思われる。


ここで、確実である、と言われている事は、このドアは鍵がかかっている、という事である。


これに対して対照的なのが、我々が或る人について、「彼にとって、このドアは鍵がかかっている、ということは確実である。(He is certain that the door is locked.)」と言うことである。
ここで我々は、このドアは鍵がかかっている、という事は事実である、と言っているのではなく、彼にとって、……、ということは確実である、と言っているのである。


第一の場合には、我々は、或る命題が真理である事は確実である、と言っているが、第二の場合には、或る人にとって、……、という事は確実である、と言っているのである。


「私にとって、このドアは鍵がかかっている、という事は確実である。(I am certain that the door is locked.)という文の場合はどうであろうか。ちょっと見るとこの文は、第二の場合に属する、即ち、確実性を或る人(その人は話者である)に属させているのであって、或る命題が真理である事についてではない、と思われる。しかしこの文は、誤解を招き易い外見をしているのである。そしてこの事は、「私にとって、このドアは鍵がかかっている、ということは確実である。しかし、このドアは鍵がかかっている、ということは確実ではない」と言うことは矛盾であろう、或いは、ほとんど矛盾であろう、という事実によって示される。「私にとって、qという事は確実である」という形の言明をするという事は、話者にとって、qは真である、という事は確実である、と言うことであり、且つまた、表だって言うのではないとしても、少なくとも、qは真である、ということは確実である、ということを含意しているのであると、思われる。




ノーマン・マルカム『何も隠されてはいない ウィトゲンシュタイン自己批判』(黒崎宏 訳、産業図書) p.387-388 *3

*1:マレーヴィチ&シュプレマティズム関連の本。
マレーヴィチによる『無対象の世界』『零の形態―スプレマチズム芸術論集』

無対象の世界 (バウハウス叢書)

無対象の世界 (バウハウス叢書)

零の形態―スプレマチズム芸術論集 (叢書・二十世紀ロシア文化史再考)

零の形態―スプレマチズム芸術論集 (叢書・二十世紀ロシア文化史再考)


大石雅彦 著『マレーヴィチ考―「ロシア・アヴァンギャルド」からの解放にむけて』
マレーヴィチ考―「ロシア・アヴァンギャルド」からの解放にむけて

マレーヴィチ考―「ロシア・アヴァンギャルド」からの解放にむけて

*2:

『哲学的探求』読解

『哲学的探求』読解

*3:

何も隠されてはいない―ウィトゲンシュタインの自己批判

何も隠されてはいない―ウィトゲンシュタインの自己批判