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「青春のクライマックス」〜 ウォルトンの交響曲第1番



Geheimagent さんのオススメにより、早速、ウィリアム・ウォルトン(William Walton、1902 -1983)の交響曲を聴いてみました。ウラディーミル・アシュケナージ指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団の演奏で(オリジナル盤を持ってました)。

Symphonies & Concertos

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まさしく好みの音楽です──まるでロベルト・シューマンストラヴィンスキーの影響を受けたような……という勝手な感慨を抱いてしまうのですが、第1楽章なんて短調変ロ短調)なのに「躁状態」というかほとんどテンポが変わらない。とにかく弦の威圧的な刻みとホルンを中心とした金管楽器の咆哮、そして Geheimagent さんが紹介しているサイモン・ラトル指揮フィルハーモニア管弦楽団の映像を見ればわかるように、ティンパニがカッコいいんだ、これが! 第2楽章のスケルツォも、シューマンの第2番の2楽章のように、屈折したリズムと威勢の良さにグッときます。一転、第3楽章はメロウでキレイ……木管がとても美しい(出番だよね)。そして輝かしい第4楽章のフィナーレ。ここでフーガを持ってくることに、作曲者の自信のほどを感じます──大英帝国はドイツなんかに負けないぜ! 


そして、久しぶりにウォルトン交響曲を聴いて思い出したのが、片山杜秀氏の文章だ。『クラシック・ディスク・コレクション301』に掲載されているもので、そこで「ガキの頃からウォルトンびいきだった」片山氏は、ウォルトン交響曲第1番について解説している(多分、この名解説を読んで、ウォルトンのCDを買ったのだと思う)。
曰く「青春のクライマックス」だと。
片山氏は高校生のときに読んだ、松平頼則の批評──ウォルトン交響曲第1番の日本初演の批評──がずっと頭に残っていたという。この高名な日本人作曲家はウォルトン作品を「四楽章仕立ての交響曲なんていう古めかしい形式に安住している」と一刀両断した。片山氏もその批評を受けいれた。しかしそれからルウェリン指揮&読売日響の実演の接して、ピンときた──ウォルトン交響曲は「古めかしい形式に安住した音楽」ではなくて、むしろそこに安住したくなくて、「終始いらついている音楽」なのではないか、と。

そうなのである! 確かにこの曲は一見型通りの四楽章構造だが、その内部にうごめくエネルギーはまったく型にはまるのを嫌い、型を突き崩そうと懸命に暴れ、もがきまくっている。ベートーヴェンの後期の作品のように、テンション高い楽想のほとばしりを形式が包みかね、一種のきしみが生じている。そういえばウォルトンはこの曲を「青春のクライマックス」と呼んでいたっけ。




片山杜秀 ウォルトン交響曲第1番変ロ短調音楽之友社『クラシック・ディスク・コレクション301』所収) p.199

オントモ・ムック/クラシック・D・C 30 (Ontomo mook)

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