HODGE'S PARROT

はてなダイアリーから移行しました。まだ未整理中。

ダニエル・ミュラー=ショットのショスタコーヴィチ/チェロ協奏曲



KONZERTE FUER VIOLONCE

KONZERTE FUER VIOLONCE


音楽系のエントリーを書くにあたって、個人的に一番書きやすいのは(とりあえず、ある程度の文字数を捻り出すことができるのは)実は現代音楽だったりする。初めて聴く作品が多いので、とりあえず、まず、その楽曲に関する説明・情報を書く。「難しい音楽」であればあるほど、書きやすい──どんな理念を持つ音楽なのか、どのような構成で、どのような「新しい」技法がなされているのか、記すべき「情報」は多い。これこれは、こういう音楽なんですよ、って、自分でもふむふむと「理解」しながら、すらすらと書ける──これは現代音楽に限らず、あまり有名ではない作品についてもあてはまる。
次に書きやすいのは、ピアノやヴァイオリンといった、自分でも弾くことのできる楽器の作品だ。とりあえず技巧・技術面に関して「それらしく書く」ことは容易い──フランツ・リストの《ため息》の「あの」アルペジオ、とか、マックス・ブルッフのヴァイオリン協奏曲第1番の「あの」重音の連続、とか。技巧が優れているかどうか、という観点ならば、ある程度の客観性を有することが──あるいは客観的であることを装うことが──できるからだ。
だけれども、著名な作曲家の、ある程度の知名度のある作品で、しかも「絶対音楽」について書くのは難しい──「標題音楽」やオペラのような作品ならば、付随する「情報」はいくらでも捻り出せる──そして自分がプレイしたことのない楽器の「技術」を云々するのもなー。いまさらシューベルトブラームスについての説明はいらないし、例えばホルンの「本当の難しさ」なんて「それらしく」書けないし……。

要するに、単に「素晴らしい楽曲」で、単に「素晴らしい演奏」について書くのは、難しい。だって「素晴らし」かったから、わざわざエントリーを書いているわけだし、例えば「長9度を有する属9の和音」(スクリャービン)が面白いって言っても、それは主観的に面白いわけであって、なぜそれが面白く感じるのか──それを「神秘和音」と呼ぶが呼ぶまいが、面白い、だけである。「素晴らしい」を説明することは、なかなか難しい──Why you need PR

PR is really about communication and how effectively you do it. The effectiveness of communication is dependent on a number of key factors. These include how communicators look in relation to their respective position of status, value, competence, honesty, reliability and credibility. Beyond these personal elements, the next key factors are the way you get your message across together with the style and content of communication.
So the first thing you have to do is answer the following questions. What kind of an organizaiotn do you want to be ? What do you want to do?




Russell Lawson 'The PR Buzz Factor' (Kogan Page Ltd, 2006), p.54 *1


そもそも音楽や演奏それ自体について書くのは……難しいんだよな。だから「音楽以外の」ファクターにグッときたとき……格段に書きやすくなる……その勢いで書くことができる。音楽について書くとき、音楽以外のファクターに、どうしても頼ってしまう。



ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲第1番 Op.107 、とりわけ第一楽章はカッコいい音楽だ。ガツンとティンパニの打撃があり、行進曲風のリズムに乗って、チェロが超絶技巧の限りを尽くす。そしてティンパニの打撃によって音楽は終結する(そう、あなたも知っているとおり)。この曲は1959年に作曲された──すなわちスターリンの死後というのが重要だ(もちろん、わかるよね)。初演はムスティスラフ・ロストロポーヴィチによって(ウィキペディアに書いてあるとおり)。

演奏は、ダニエル・ミュラー=ショット(Daniel Müller-Schott、b.1976)のチェロ。ヤコフ・クライツベルク/Yakov Kreizberg 指揮&バイエルン放送交響楽団
ダニエル・ミュラー=ショットは、かなりのスピードでこの難曲を弾ききっている。素晴らしい演奏だ。とくに後半、「あの」チェロのソロがオケの伴奏形のリズムを刻み、そのかわりにホルンが主題を歌うところ。僕はチェロもホルンもプレイしたことがないのだけれども、大きなチェロが「あの」鋭く速いリズムを刻むのは壮絶以外の何者でもなく(そこ、チェロの低音がバシバシ腹に響く)、もともとチェロが奏していた「あの」旋律をホルンに吹かせるのは──息継ぎが必要な管楽器の特性上──やはり相当な技術を要することは想像がつく。

一方、第2番 Op.126 では、チェロの技巧もさることながら、チェレスタシロフォンなどの楽器がとても神秘的に響くところがあって、面白い。ホルンもカッコいい。


それと……一応書いておくが、このエントリーは、CDのジャケットの「情報」──すなわちダニエル・ミュラー=ショットのカッコよさにグッときて、意外に書きやすかった。


[Daniel Müller-Schott]

*1:

The Pr Buzz Factor: How Using Public Relations Can Boost Your Business

The Pr Buzz Factor: How Using Public Relations Can Boost Your Business