HODGE'S PARROT

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ベロフ/メシアン《世の終わりのための四重奏曲》



ミシェル・ベロフ(Michel Béroff、b.1950)の弾くオリヴィエ・メシアンの曲はやはりいいな、と《世の終わりのための四重奏曲》(Quatuor pour la Fin du Temps、1941)を聴いた。
エーリッヒ・グルーエンベルク/Erich Gruenberg(ヴァイオリン)、ジェルヴァーズ・ド・ペイア/Gervase de Peyer(クラリネット)、ウィリアム・プリース/William Pleeth(チェロ)。

Messiaen: Quatuor Pour La Fin

Messiaen: Quatuor Pour La Fin

僕の持っているCDは二枚組の国内盤で、カップリングは《トゥーランガリーラ交響曲》──アンドレ・プレヴィンロンドン交響楽団の演奏、そしてブックレットに西村朗氏の解説があり、カヴァーにはマルク・シャガールの絵『Lovers with Flowers』がプリントされている。《世の終わりのための四重奏曲》は1968年の録音であるが、さほど古さは感じない……
そう、1968年の録音なのだ。ということは、このときミシェル・ベロフは18歳──前年の1967年に、17歳でメシアン国際ピアノ・コンクールで優勝したばかりなのである。他の奏者は40代、50代のベテラン──この時代のベテランの演奏なので、例えば、ヴァイオリンは、ポルタメントをかなりつけ、ヴィブラートも大きく揺れる、それがまた、若干18歳のベロフの、硬質のピアノと相まって絶妙な音の綾を聴かせてくれる。


《世の終わりのための四重奏曲》は以下の8曲からなる。

  1. 水晶の礼拝
  2. 時の終わりを告げる御使のためのヴォカリーズ
  3. 鳥たちの深遠
  4. 間奏曲
  5. イエズスの永遠性への讃歌
  6. 7つのトランペットのための狂乱の踊り
  7. 時の終わりを告げる御使のための虹の錯乱
  8. イエズスの普遍性への讃歌

《ヴォカリーズ》や《狂乱の踊り》《虹の錯乱》のような激しい曲調の楽章では何度聴いても「うっ」とくる。そのめくるめく眩い色彩感がたまらない──やはりメシアンって、とんでもない音楽を書くな、と思う。一方で、《深遠》や《永遠性の讃歌》《普遍性の讃歌》のような瞑想的な曲も、すごくいい。アンビエント? 全然違う。

メシアンはスコアの冒頭四ページにわたって作品の解題的意図、リズム語法に関する理論的解説、そして演奏者への助言を記している。それによれば、曲はヨハネ黙示録第10章から直接的な霊感を得たもので、その音楽語法は本質的に、非物質的、精神的、かつカトリック的であるという。さらに、特殊な旋法性とリズム法が、聴者を永遠の時空へいざなうために働くのだ、と記している。追いつめられた死におびえる魂を、カトリック神秘主義的な永遠性の中に導き、深い安息を与えるべく作曲された作品と言うことができようか。




西村朗 ブックレット解説より


こういう音楽を聴くと、なんだかすべてが許されるような気になってくる。愛、を感じる。いや、愛があって、愛がすべてなのだ。愛に満ちている。すべての人に。とりわけ「罪人」に。いますぐに。

「もはや時がない。第7の天使がラッパを吹くとき、神の秘められた計画が成就する。それは、神が御自身の僕である預言者たちに良い知らせとして告げられたとおりである。」




ヨハネの黙示録 10.6-7 (新共同訳『聖書』より)