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ジュリアス・カッチェンのブラームスとシューマン




レコード芸術』の「レコード・イヤーブック2008」眺めていたら、昨年はブラームスのピアノ協奏曲の「新譜」がリリースされていなかったことに気がついた。マイナーな海外レーベルからは出ているのかもしれないが、少なくとも、大手レーベルからは出ていないようだ──ま、ブラームスの協奏曲ような大曲がリリースされれば、バックを務める指揮者&オーケストラとともに話題にならないわけはないが。でも、「再発」はいくつかあった。ブラームスの協奏曲の人気が低下したわけではないだろう(多分)。例えばアシュケナージポリーニ、ツィマーマン、ギレリス……。
彼らの演奏もとてもいいのだけれども、USA のピアニスト、ジュリアス・カッチェン(Julius Katchen、1926 - 1969)の演奏がカタログにあると嬉しい。同じ Decca から出ているバックハウスベームウィーンフィルの「名盤」とされている録音よりも(笑)。

Art of Julius Katchen 3

Art of Julius Katchen 3


『The Art of Julius Katchen』シリーズの Vol. 3 で、収録曲はブラームスの二曲のピアノ協奏曲、シューマンイ短調協奏曲及び《幻想曲ハ長調》だ。
とりわけブラームスの第1番ニ短調がすごい。冒頭のマエストーソで、ピエール・モントゥー/Pierre Monteux 指揮&ロンドン交響楽団が、他では味わえない豪快な音を鳴らす。その緊張感の只中に、ピアノが絡んでくる。ドラマティックな展開をする。至難な技巧も、Decca の録音の良さもあって、オケにかき消れず、存分に聴こえる。この曲の名演の一つだと思う。

第2番変ロ長調では、ハンガリーの指揮者ヤーノシュ・フェレンチク/Janos Ferencsik が、やはりロンドン交響楽団から重厚な響きを引き出す。ピアニストも力強いタッチで、負けじとオーケストラと対峙する。壮大な「交響曲」。ブラームスの協奏曲はこうじゃなくっちゃね。

ハンガリーの指揮者シュトヴァン・ケルテス/ Istvan Kertesz &イスラエルフィルハーモニー管弦楽団と組んだシューマンも、いい。シューマンならではの情熱を余すところなく聴かせてくれる。カデンツァの気迫、緩徐楽章のリリシズム。まさにロマンティックな演奏だ。『幻想曲』も好演。


それとブックレットを見たら、シューマンの協奏曲のプロデューサーは、あの有名なジョン・カルショウ(John Culshaw、1924 - 1980)だった。どうりで音が良いはずだ。


レコードはまっすぐに―あるプロデューサーの回想

レコードはまっすぐに―あるプロデューサーの回想

ジョン・カルショウの名録音

ジョン・カルショウの名録音




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