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サン=サーンスのレクイエム&詩編



サン=サーンス:レクイエム

サン=サーンス:レクイエム

カミーユ・サン=サーンス/Camille Saint-Saëns の膨大な作品の中で、宗教音楽は意外なほど少なく、また、それらが演奏・録音される機会も、そう多くはない。しかしこの《レクイエム/Requiem》Op.54 と《詩編/Psaume XVIII》Op.42 は、非常に美しく魅力的な作品である。
Saint-Saens: Messe de Requiem . Partsongs 暗く、神秘的な《Kyrie》から、まるでベルリオーズの《幻想交響曲》を聴いているかのような、あのグレゴリア聖歌の旋律が登場する《Dies Irae》、《Oro Supplex》の悲劇性、《Benedictus》のまさに天上的な心地よい音響、そして「死者のためのミサ」を締めくくる最後の《Agnus》──この《Agnus》の美しさは、ちょっと筆舌に尽くしがたい、非常な感動を覚えさせてくれる。

神羊誦 (Agnus Dei)



この世の罪を取り除く神の小羊よ
彼らに安息をお与えください
この世の罪を取り除く神の小羊よ
彼らに安息をお与えください
この世の罪を取り除く神の小羊よ
彼らに永久の安息をお与えください





レクイエム [ウィキペディアより]

ただし、相良憲昭音楽史の中のミサ曲』(音楽之友社)によれば、この《レクイエム》は、サン=サーンスの友人であった郵政大臣アルベール・リボンの十万フランの遺贈と引き換えに──そしてそれにより作曲者がマドレーヌ教会におけるオルガン演奏活動から解放され、作曲に専念できるようになるべく──依頼されたものであるという。しかもサン=サーンスはこの「感動的な音楽」をわずか一週間で作曲している。

サン=サーンスは、オペラであれ、交響曲であれ、室内楽であれ、そして宗教曲であれ、まさに最上の職人技を発揮できる「芸術家」だと思う。《詩編》も華やかな色彩と覚えやすいメロディ、フーガなどの技法をちりばめた見事な作品で、そこには堂々たる神の賛歌以外の何ものも聴こえない。もっとも、やはり『音楽史の中のミサ曲』を参照すれば、サン=サーンスは、「宗教の意味は認めるが自分は確固たる無神論者だ」と告白したそうだが。
それでもなお……

天は神の栄光を物語り
大空は御手の業を示す
昼は昼に語り伝え
夜は夜に知識を送る。
話すことも、語ることもなく
声は聞こえなくても
その響きは全地に
その言葉は世界の果てに向かう。





知らずに犯した過ち、隠れた罪から
どうかわたしを清めてください。
あなたの僕を驕りから引き離し
支配されないようにしてください。






詩編 第19 より(新共同訳『聖書』)