- アーティスト: Bruckner,Mohlmann,Elsner,Heilmann,Rilling
- 出版社/メーカー: Brilliant Classics
- 発売日: 2003/09/30
- メディア: CD
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アントン・ブルックナーのミサ曲全3曲に『テ・デウム』『詩篇150』が収録された Brilliant のお買い得CD。ちらっと見たら第3番のバリトンがマティアス・ゲルネ/Matthias Goerne だったので聴いてみた。ヴェレーナ・シュヴァイツァー/Verena Schweizer(ソプラノ)、エリーザベト・グラウザー/Elisabeth Glauser(アルト)、ウヴェ・ハイルマン/ Uwe Heilmann(テノール)、ゲッヒンゲン聖歌隊/Gächinger Kantorei、ヘルムート・リリング/ Helmuth Rilling 指揮、シュトゥットガルト放送交響楽団/Radio-Sinfonieorchester Stuttgart。
ブルックナーの交響曲はいまだに5番と8番が敬遠気味なのに対し、『テ・デウム』や『ミサ曲』といった合唱曲/宗教曲は交響曲に負けじと好きなほうだ。なんと言っても聴きやすい。ミサ曲第3番も60分以上の長丁場だが、荘厳で力強い部分と美しく神秘的な部分の交代が見事で、起伏に富んでおり、決して飽きさせない。とくに『グローリア』のカッコよさ(フーガだ!)と『クレド』のソロとヴァイオリンが絡む静謐な音楽にグッとくる。
バロック以後のミサ曲では、クレドの作曲手法に伝統的な約束ごとのようなものがある。たとえば冒頭はフォルテで、しかもアレグロなどの速いテンポで始まり、「天よりくだり」(descendit de caelis)の部分では下降旋律を、「天にのぼり」(Et ascendit in caelum)では上昇旋律を用いる。
また中間の部分「精霊によりて、御からだを受け」(Et incarnatus est Spiritu Sancto)ではテンポがゆるくなって転調し、多くの場合ソプラノのソロに委ねられる。ちなみにカトリックの典礼曲において、聖母マリアの声はソプラノ・ソロ、天使の声は女声合唱で表し、また神の声はバスのソロで、三位一体の神の場合は混声三部で表現することが多いのである。
そういえば──音楽之友社の『ブルックナー 作曲家別名曲解説ライブラリー 5』によれば、この大ミサ曲初演のステージ練習を担当した指揮者ヘルベック/Johann Herbeck は、この音楽のもつあまりの重厚な迫力のために、練習の途中で極度の感動に襲われて指揮台の上に倒れてしまったという逸話があるそうだ。古い小説でよく登場人物が失神したりするが、あれはすべて「フィクションだから」というわけではないのだな、と思った。
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