HODGE'S PARROT

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前橋汀子の 『La Fille aux Cheveux De Lin』



ヴィエニャフスキーの《スケルツォ=タランテラ》とパガニーニの《カンタービレ》の両曲が収録されているCD、前橋汀子の『亜麻色の髪の乙女』を聴いた。ピアノ伴奏は前橋由子。

ドビュッシー/ハルトマン編 Debussy-Hartmann

ヴィエニャフスキ Wieniawski

チャイコフスキー Tchaikowsky

  • メロディー Melodie Op.42-3 「懐かしい土地の思い出」より

ノヴァチェック Novacek

  • 無窮動 Perpetuum Movile

パガニーニ Paganini

シマノフスキ Szymanowski

  • アルトゥーザの泉 La fontain D'arethuse Op.30 組曲「神話」より

ドヴォルザーククライスラーDvorak-Kreisler

  • スラヴ舞曲 Slavonic Dance Op.72-2

ヴュータン Vieuxtemps

  • ロマンス「失望」Romance "D'esespoir" Op.7-2 「詩のない七つのロマンス」

シューベルト/ウィルヘルミ編 Schubert-Wilhelmi

クライスラー Kreisler

  • 愛の喜び Libesfreud
  • 愛の悲しみ liesleid
  • 美しきロスマリン Schon Rosmarin
  • ギターナ La Gitana


いわゆるヴァイオリン小品集/アンコールピースといった類のものなのだが、それほど気楽に聴けるものではない。ヴァイオリニストの気迫とパッションに終始、圧倒させられ、良い意味で緊張を強いられるのだ。最初の、あの《亜麻色の乙女》でさえ、ノン・ヴィブラートの芯のある音から始まって大胆な「うねり」を聴かせる展開に、まったく胸がすく思いがする。とりわけ《スケルツォ・タランテラ》や《無窮動》といった奏者に壮絶なボーイング技法を要求する作品、絶妙に音色を変化させエクスタシーの詩を生々しく歌い上げる《アルトゥーザの泉》は、ちょっとこれ以上の演奏が思い浮かばないくらい、気に入っている。

また、他のCDでは意外に見かけない感じのするヴュータンの《ロマンス》が収録されているのが嬉しい*1。この曲は、小品ながら悲痛なまでの情熱の迸りにグッとくるものがあり、ヴァイオリンならではの名曲だな、と思う。


レディ・ジョーカー〈上〉 レディ・ジョーカー〈下〉そういえば、高村薫の『レディ・ジョーカー』で「チャイコフスキーパガニーニヴィエニャフスキ、ヴュータン以外のものだったら大抵のものは」弾く、と合田刑事が語っていたが、チャイコフスキーヴィエニャフスキのスラヴ的な情緒がキャラクターに会わないのは何となくわかるし、パガニーニの「技巧偏重」もそうだろうと思う。でもヴュータンはそれほどイメージに違わないと思うのだけれどな。

*1:いちおう今回は YouTube あたりで検索しやすいように原語表示をしておいたが、探し方が悪いのかヴュータンの曲はヒットしなかった。残念。