ヴィエニャフスキーの《スケルツォ=タランテラ》とパガニーニの《カンタービレ》の両曲が収録されているCD、前橋汀子の『亜麻色の髪の乙女』を聴いた。ピアノ伴奏は前橋由子。
ドビュッシー/ハルトマン編 Debussy-Hartmann
- 亜麻色の髪の乙女 La Fille aux Cheveux De Lin
- スケルツォ・タランテラ Scherzo=Tarantelle Op.16
チャイコフスキー Tchaikowsky
- メロディー Melodie Op.42-3 「懐かしい土地の思い出」より
ノヴァチェック Novacek
- 無窮動 Perpetuum Movile
パガニーニ Paganini
- カンタービレ Cantabile Op.17
シマノフスキ Szymanowski
- アルトゥーザの泉 La fontain D'arethuse Op.30 組曲「神話」より
ドヴォルザーク/クライスラー編 Dvorak-Kreisler
- スラヴ舞曲 Slavonic Dance Op.72-2
ヴュータン Vieuxtemps
- ロマンス「失望」Romance "D'esespoir" Op.7-2 「詩のない七つのロマンス」
シューベルト/ウィルヘルミ編 Schubert-Wilhelmi
クライスラー Kreisler
- 愛の喜び Libesfreud
- 愛の悲しみ liesleid
- 美しきロスマリン Schon Rosmarin
- ギターナ La Gitana
いわゆるヴァイオリン小品集/アンコールピースといった類のものなのだが、それほど気楽に聴けるものではない。ヴァイオリニストの気迫とパッションに終始、圧倒させられ、良い意味で緊張を強いられるのだ。最初の、あの《亜麻色の乙女》でさえ、ノン・ヴィブラートの芯のある音から始まって大胆な「うねり」を聴かせる展開に、まったく胸がすく思いがする。とりわけ《スケルツォ・タランテラ》や《無窮動》といった奏者に壮絶なボーイング技法を要求する作品、絶妙に音色を変化させエクスタシーの詩を生々しく歌い上げる《アルトゥーザの泉》は、ちょっとこれ以上の演奏が思い浮かばないくらい、気に入っている。
また、他のCDでは意外に見かけない感じのするヴュータンの《ロマンス》が収録されているのが嬉しい*1。この曲は、小品ながら悲痛なまでの情熱の迸りにグッとくるものがあり、ヴァイオリンならではの名曲だな、と思う。
そういえば、高村薫の『レディ・ジョーカー』で「チャイコフスキー、パガニーニ、ヴィエニャフスキ、ヴュータン以外のものだったら大抵のものは」弾く、と合田刑事が語っていたが、チャイコフスキーとヴィエニャフスキのスラヴ的な情緒がキャラクターに会わないのは何となくわかるし、パガニーニの「技巧偏重」もそうだろうと思う。でもヴュータンはそれほどイメージに違わないと思うのだけれどな。