「あ、これはいいな」と『宗教音楽対訳集成』(井形ちづる+吉村恒 訳・編、国書刊行会)を購入。ブルックナーの壮麗な──あのハイテンションでギラギラした──《テ・デウム》を聴きながら、ざっと読んだ。
- 作者: 井形ちづる,吉村恒
- 出版社/メーカー: 国書刊行会
- 発売日: 2007/12/01
- メディア: 単行本
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
宗教音楽(教会音楽)を、主にコンサートやCDで、あるいは YouTube などで「音楽鑑賞」しているリスナーのために書かれたもので、ローマ・カトリックのラテン語典礼文の対訳、ミサ典礼の歴史、聖務日課などの概説に加え、プロテスタントのバッハに代表される受難曲、ブラームスの《ドイツ・レクイエム》あたりにも十分な解説がなされている。
しかも《テ・デウム/Te Deum》の別名が「至聖なる三位一体をたたえる賛歌/ Hymnus in honorem Ss. Trinitas」であり、日本のカトリック教会では「賛美の賛歌」、日本聖公会では「賛美の頌」と呼ばれるといった、キリスト教文化に関するトリビアな知識も満載だ。
もちろん「音楽書」なので、例えば《グレゴリオ聖歌》の「あの旋律」はベルリオーズの《幻想交響曲》、サン=サーンスの《死の舞踏》、ラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》といったクラシックな有名作品だけではなく、レスピーギの《ブラジルの印象》、ダッラピッコラの《囚われの人の歌》、黛敏郎の映画音楽《天地創造》、ジョージ・クラムの《ブラック・エンジェルズ》、外山雄三の《子供の十字軍》、権代敦彦《怒りの日/嘆きの日》などの近現代音楽にも使われているよ、と資料的にもかなり厚みのあるものになっている。「ラテン語 歌い出し検索」もあるなど至れり尽くせりだ。
多分、これ一冊で「宗教音楽なんてこわくない!」と言えるのではないか、と思う。
というわけで、ブルックナーも聴き終わったので、次にジョセフ=ギイ・ロパルツ(Joseph-Guy Ropartz、1864 - 1955)の暗い色調の、しかし限りな美しく感動的な《詩篇第129番 ”深き淵から”》(Psaume 129 "De Proufundis)を聴いた。
- アーティスト: Joseph Guy Ropartz,Michel Piquemal,Ile de France Vittoria Regional Choir
- 出版社/メーカー: Accord
- 発売日: 2002/06/17
- メディア: CD
- 購入: 3人 クリック: 27回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
ロパルツはフランスの作曲家で、この《詩篇》が1941年に書かれたことに何かしらの「意味」、あるいは「意義」をどうしても感じてしまう。そのようなことを、この『宗教音楽対訳集成』を読んだ後、より深く「理解」したように思う。
デ・ブロフンディス(深い淵から) De profundis
深い淵から あなたに叫んでいます、主よ。
主よ、私の声をお聞きください。
御耳を傾けてください、
嘆き祈るこの声に。
あなたが不正に目を留められるなら、主よ、
主よ、だれが耐えられましょう?
あなたのもとに赦しがあるから、また
あなたの法のゆえに
わたしは耐えてきたのです、主よ。
わが魂は その御言葉を待ち望み
わが魂は 主に望みをかけてきたのです。
朝から夜まで 私は見張ります。
イスラエルが主に望みをかけるように と。
主のもとには慈しみがあり そのもとには
ゆたかな贖いがあるのですから。
そして みずからイスラエルを
あらゆる不正から贖ってくださるのです。
『詩編』129(130)
『宗教音楽対訳集成』より p.93
[関連エントリー]