HODGE'S PARROT

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クラウディオ・アラウのリスト



【前口上 ── ファッション雑誌『Esquire』を読みながら「徹底して」ピアノ音楽(協奏曲、室内楽を含む)を聴いているので、しばらくはそのような気分でいきたい】
クラウディオ・アラウ(Claudio Arrau、1903 - 1991)によるフランツ・リストFranz Lisztヴィルトゥオーゾ作品を聴いた。


曲は『超絶技巧練習曲集』全曲、3つの演奏会用練習曲、ピアノ協奏曲第1番、2番という実に「ハードな」ものだ。
Esquireにも書いてあるように、アラウは南米チリ出身でありながら「ドイツのピアニスト以上にドイツ的」と評されたピアニストだ。ということは、彼もいわゆる「ドイツ音楽至上主義」なのかもしれない。このリスト作品集でも、重厚で奥深い響きを聴くことができる。
例えば『超絶技巧練習曲/Etudes D'Execution Transcendante』の《マゼッパ》。この難曲中の難曲を、アラウは指回り(滑り)の練習曲に終わらせない──只ならぬドラマがそこで展開されている。やはり最難曲であろう《鬼火》にしても──もっとスピーディに爽快に弾ける、とりわけロシア出身のピアニストは多くいるだろう──明滅する光というよりも、ヤン・フスを死に至らしめた業火を彷彿させる。僕の大好きな弟10番(アレグロ・アジタート・モルト ヘ短調)も、低音がグラグラと鳴る、迫力に満ちた音楽になっている。
三つの演奏会用練習曲も同様で、音楽的にも密度の濃い《レジェレッツァ》は、「軽やかに」というよりもスリルとサスペンス、そしてパッションを感じさせ、有名な《ため息》も雄大アルペジオの波に飲まれるかのごとくに圧倒される──もちろんそれが実に快感なのだ。
協奏曲では、まるでブラームスのそれのように重々しく展開する(共演はサー・コリン・デイビス指揮、ロンドン交響楽団)。テンポは、はっきり言って、遅い。だけれども、このスケールの大きさ、安定した構成力、シンフォニックな響きは、他のピアニストでは味わえないものだ。もちろんこれも作曲家フランツ・リストの別の一面であろう、アラウはそれを老獪にも描き出している。


Liszt:12 Transcendental Studie

Liszt:12 Transcendental Studie

それにしてもリストは本当に good-looking guy だな。しかも身だしなみもファッショナブルだし──アルマーニは似合うだろうな。