HODGE'S PARROT

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蝙蝠──メランコリアの印



Amazon から注文していたミケランジェロの彫刻に関する本『Michelangelo: Sculptor』が届いた。

Michelangelo: Sculptor

Michelangelo: Sculptor


早速眺めてみて、いろいろな発見があった。一つの作品に対して、いくつかの角度から写真が撮られていたからだ──もちろん、基本的に平面である絵画作品と比べて、立体である彫刻作品を写真で見ることの限界も感じたが。

例えば、メディチ家廟堂のロレンツォ・デ・メディチの像(このロレンツォ像は僕の大好きな作品で「お気に入りアイコン」にも使用させてもらっている)。
→ Cappelle Medicee, sagrestia nuova tomba di lorenzo [Wikimedia Commons](あまり鮮明ではないけどね)
こっちのほうがいいかな、ジュリアーノ公爵の写りもいいし → http://www.all-art.org/early_renaissance/michelangelo6.html



そしてイメージ検索していたら、ロレンツォ像をカヴァーにあしらった本を見つけた。題して 『言語としてのアート: ウィトゲンシュタイン、意味、そして美学理論』!!!

Art As Language: Wittgenstein, Meaning, and Aesthetic Theory

Art As Language: Wittgenstein, Meaning, and Aesthetic Theory

さっそく注文しなくては(笑)




このロレンツァが膝の上に置いている金庫に施された蝙蝠の顔が良く見えるのだ。正面からだと潰れたちょっと間抜けな感じにしか見えないが、側面から見るとこの動物の奥深い「表情」を伺い知ることができる。しかもこれがロレンツォの頭に被っている兜と相似であることもわかる──さすがミケランジェロだなと思う。
したがって以下の文章の説明も、とても良く理解できる。

ロレンツォは「憂鬱質」のしるしでもある金庫を膝の上におき左手の人差指で口をおおっている。この左手の中の布は思索のもつれを示すものとされる。金庫にはさらにメランコリアの印の蝙蝠の顔がついている。
又ジュリアーノは膝の上に指令杖を置き、左手に二枚の金貨をもっている。この金貨についてパノフスキーは外的な行動を自ら「費やす」男の象徴として解釈し、これが「行動」をあらわしているものという。この区別は当然この人物の気質をあきらかにする。すなわちロレンツォが「憂鬱質」の姿をしており、行動をあらわすジュリアーノが「多血質」をもあらわすことである。





田中英道ミケランジェロ』(講談社学術文庫) p.246

ミケランジェロ (講談社学術文庫)

ミケランジェロ (講談社学術文庫)





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