HODGE'S PARROT

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ミャンマー/ビルマ情勢、仏トタル社の身振り



まず、国名の表記をどうするかで迷った。

ミャンマー?それともビルマ?=米政府など、軍政の改称認めず [時事通信]

ミャンマー国軍が全権を掌握した後の同年2月、日本政府は政府承認のための国際法上の要件を満たしているとして軍政を承認し、ミャンマーを使用。国連も軍政が代表権を持つため、呼称をミャンマーに変更した。

 これに対し、欧米諸国や英BBCなど西側メディアの多くは、今もビルマとの呼称を使い続けている。AFP通信によると、ホワイトハウスのフラット報道官は米政府がミャンマーとの呼称を避けている点に触れ、「自国民を抑圧する独裁体制の言葉を用いないようにしている」と説明した。

 軍政と良好な関係を維持する中国やロシアは、ミャンマーとの呼称を受け入れており、各国の政治的な立場を如実に物語っている。


で、とりあえずウィキペディアを参照した。

1989年6月18日に軍事政権は、国名の英語表記を、Union of Burma(ユニオン・オブ・バーマ)から Union of Myanmar に改称した。軍事政権が代表権を持つため国連と関係国際機関は、「ミャンマー」に改めた。また日本政府は軍政をいち早く承認し、日本語の呼称を「ミャンマー」と改めた。日本のマスコミは多くが外務省の決定に従ったが、軍事政権を認めない立場から括弧付きで「ビルマ」を使い続ける社・媒体(朝日新聞社、『週刊金曜日』など)もある。


アウン・サン・スー・チーや亡命政府「ビルマ連邦国民連合政府」など軍事政権の正当性を否定する側は、改名が軍事政権による一方的なものだとし、英語国名の変更を認めていない。
タイの英字紙、英BBC、「ワシントン・ポスト」などの有力英語メディア、ドイチェ・ヴェレやARDなどのドイツ語メディア、および主要な人権団体は "Burma" の呼称を続けている。アメリカ合衆国、イギリス、オーストラリア政府などは "Burma" とし、EUは "Burma" と "Myanmar" を併記している。


いちおう個人的に、EU方式を取っておきたい。


ところで、(個人的なことであるが)このウィキペディアを参照したことによって、以前僕が編集した「ある用語」の一部が削除されているのに気がついた(正確には、ある種「怒り」を持って編集したため、別の方が「ウィキペディア・クウォリティ」に沿って訂正し直してくれたものであるが、それで満足している)。
もちろん、それを復活させて、さらに「議論を広げる=問題化」するための項目を加えておいた──そのためちょっと時間が食ってしまったが。


そして以下も個人的なメモである。


アメリカでは、ライス国務長官が、

「国連安保理がもっと強い行動を起こすことを期待していた」と述べ、中国の反対で制裁決議協議ができない状況に不満を示した。そのうえでライス長官はアウンサンスーチー書記長らの釈放要求を軍事政権が受け入れるべきだとの考えを強調した。




Yahoo!ニュース/毎日新聞


しかし僕がとくに関心があるのは、政治家/閣僚以外で、アメリカでは誰がどんなことを言っているのかだ。以下の産経の記事は参考になった。

米国で中国への批判高まる ミャンマー軍政支持 [Yahoo!ニュース/産経新聞]

ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」の中国専門研究員ジョン・タシック氏は「中国は過去十数年、ビルマミャンマー)での軍事、戦略、経済などの多方面で自国の利益と勢力を拡大するために、その軍事政権を支援してきたので、その現状を守ることが至上の政策目標だろう」と語った。



ジョージメイスン大学のジョン・デール教授は「中国はこうした戦略的利益の保護と、自国の独裁体制のゆえに、ミャンマー独裁政権への挑戦を本当は激しく忌避している」と述べる。



米国の人権活動家でノーベル平和賞をも受賞したジョディ・ウィリアムズ氏は米国大手紙への寄稿で「中国はミャンマーの道路、空港、通信網などの建設で経済近代化に多大な貢献をしてきたから、強い影響力を行使できるはずだが、そうはしていない」と批判した。



政治評論家のマイケル・ガーソン氏*1は28日付の米紙数紙のコラムで「中国はビルマなど各国の独裁政権支持で知られるようになり、このままだと来年の北京五輪は人権抑圧への不満の表明の場となる」と論じ、五輪への悪影響を指摘した。


こういった中国(そしてロシア)批判は、他にも日本語で読めるのだが、英語メディアで批判に挙がっていたフランス企業に関しては、それほど話題になっていないように感じた。日経新聞が伝えているぐらいだろうか。

ミャンマー投資、仏企業は中止を・仏大統領 [NIKKEI NET]

サルコジ仏大統領は26日、ミャンマーの反軍事政権デモと政権当局の対立を受け「(仏石油大手)トタルなど仏企業はミャンマーへの新規投資を中止すべきだ」と呼びかけた。


 トタルは「ミャンマーでの活動は社会的に重要」として政府の要請を受け入れない意向を示している。同社はミャンマー南部で天然ガスの採掘をしており、タイなどに供給している。


もちろん、Wikipedia の「Total S.A.」にも、この大手石油・ガス会社とミャンマービルマとの関係について触れられているが、ついさっき僕自身がウィキペディアを編集したばかりなので、やはり「それなりに信頼性のある」メディアを参照したほうが良いだろう。

Total, in spotlight, defends Iran and Myanmar deals [Reuters]

Total is one of the biggest foreign investors in Burma where its joint venture earns the military regime hundreds of millions of dollars a year, according to the Burma Campaign UK Web site.


"France calls on all of its private companies, for example Total, to show the greatest restraint in their investments in Myanmar, and to not make any new ones," Sarkozy told reporters after meeting Myanmar opposition politicians.


Total said no new investment was planned in Myanmar and defended its presence there saying oil and gas reserves were not necessarily located in democracies.

ロイターは、「Burma Campaign UK Web site によると」としながらも、トタル社が軍事政権を利している最大の外国企業の一つであると伝えている。


France and Total under fire for 'financing' regime [INDEPENDENT]

Total and the French government have rejected pleas from Burmese opposition and French trades unions and human rights group for the oil giant to suspend its activities in the Yadana gas field in southern Burma.


Critics point out Total is the largest economic operator in Burma and a significant conduit of cash to the military regime. Several human rights groups have accused Total of making use of forced or child labour – something the oil company angrily rejects.


Paris, and the company, argue that Total's presence is, on the whole, a force for good. Withdrawal would allow carte blanche for Chinese or other companies which would be "less respectful of ethical issues".

『インディペンデント』では、トタル社のみならずフランス政府への批判が高まっていることを示す。人権団体が指摘する児童就労の問題──会社側は否定──も取り上げている。

A French diplomat told the newspaper Liberation off the record yesterday: "Annoucing a freeze of what is already frozen is hardly revolutionary. It allows (the president) to surf on the notion of a French 'new deal' for human rights, while protecting French economic interests."


Les Amis de la Terre – the French branch of Friends of the Earth – has called for tougher EU sanctions against Burma and against European companies operating there. "The Burmese junta draws all its cash from the pillage of natural resources by foreign private companies," the group said.


The left-wing French trades union federation, the Confédération Génerale du Traval (CGT) has called on Total to "halt all extraction of gas and freeze all transfers" to the Burmese regime "so long as human rights are being abused".


French Oil Company Defends Burma Energy Projects [VOA News]

Critics say the money brought in by foreign investors like Total keeps the current military regime in power.


Burma is thought to have substantial supplies of natural gas and oil that have attracted energy companies from China, India, and Malaysia.

The Voice of America も同様に、「トタル社のような外国企業」が軍政維持に一役買っていると指摘。
また、International Herald Tribune によれば、オランダでは左派政党が中心になって、トタルのガソリンスタンドに対する不買運動が起きているようだ。

Dutch left parties call for boycott of Total stations over Myanmar [IHT/AP]

Four left-leaning Dutch parties, including the largest, called for a boycott of gas stations owned by France's Total SA on Friday due to the company's investments in Myanmar.


The military junta that rules the Asian country this week escalated its efforts to repress pro-democracy demonstrations led by thousands of Buddhist monks.


"It's a call for the Dutch people to show what they think of this company, which does not have clean hands," said Martijn van Dam, a member of parliament for the Dutch Labor Party, the junior partner in the Netherlands' centrist governing coalition. He said he did not know how many people would participate in the boycott.


"You never know. But a lot of Dutch people feel empathy for the Burmese," he said, referring to the country's name before the current regime took power in 1989.


それと今回のミャンマービルマ情勢以前のものなのだが(9月6日付)、『インターナショナルビジネスタイムズ』にトタル社関連のニュースがあった。個人的に興味を惹いたのでメモしておく。

中国の張順傑氏、「Gスタンド20ヶ所を仏トタル社に売却」と言明 [IBTimes]

中国の民営石油関連企業の一括売却をリードする張順傑氏は4日、「2007年中国石油流通業発展高層フォーラム」で、20ヶ所余りのガソリンスタンドを仏トタル社に売却したことを明らかにした。今回の売却にはいくつかの卸売企業も含まれているという。


 今年に入り、90社余りの民営石油企業は石油調達難に直面しており、これまでに英BP社、仏トタル社、韓国SK社などと頻繁に接触を行ってきた。

*1:Michael Gerson は、『ワシントン・ポスト』のコラムニストで『フォーリン・アフェアーズ』を発行している外交問題評議会Council on Foreign Relations)の研究員であるが、何よりもブッシュ大統領のスピーチライターとしての活躍が知られている。特に大統領の「悪の枢軸(axis of evil)」発言は彼の考案によるものだ。