HODGE'S PARROT

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猥褻の裏面において何が起こっているのか 「にゅーあきばどっとこむ」の記事に対して



最初はジジェクやバトラーあたりに言及して、ポルノの「幻想」と実際の「行為」についてぐだぐだと書こうと思ったのだが、それはひとまず放棄する。あまりにも怒りが込み上げてきたからだ。したがって以下は単純な怒りの表明であり、関連する英国で最近起きた事件について記したものだ。


原因となったのが「にゅーあきばどっとこむ」の記事。RyOTA さんのエントリーで知った。

人の好みは十人十色。「たまたま好きになった人が同性だっただけ」という同性愛者の方々を見かけることがネットの発達でわりと多くなった。あなたの隣にいる人も実はアナルを狙っているかも!? とヒヤヒヤしてしまう昨今、「All About」で「ゲイが好きな男」という気になるランキングが発表されていたぞ。傾向としては、イケメンではなくガタイの良いヒゲの生えた方々に人気が集まっている様子。なにげに2ちゃんねる管理人のひろゆきさんの名前も連ねられているので、同性愛板に降臨されてみては?



http://www.new-akiba.com/archives/2006/11/post_4596.html

よくこんなふざけたことが書けると思う。この「あなたの隣にいる人も実は○○を狙っている」というのは、アメリカの保守派、例えばジェシー・ヘルムズ/Jesse Helms のポルノ禁止法の「言い回し」そのものではないか──「子供を狙っている」のは誰か? 反ポルノ運動を駆動させる決定的な「リビドー」への備給がまさにそのような「言い回し」なのではないか?

この「にゅーあきばどっとこむ」の記事を書いた人物は、同性愛者の存在や「ゲイが好きな男」と聞いただけで、なぜ、「アナルを狙っている」という発想に行き着くのか。この「短絡」は、なぜ起こるのか?
それは、この人物が、「コンテクストが変われ」ば「同じような行為」を「実際に行う」と「確信」しているからではないか。

しかもこの人物はご丁寧に「ヒヤヒヤしている」と書いている。で、あるならば「子供を持つ親の気持ち」は十分に理解しているよな? 「要注意人物」に対する「危険視」という「感受性」がなぜ強力な「社会運動」「政治運動」に進展するのかもだ。そのためにお前は何ができるんだ?

ここで宮粼勤事件を思い出すのは容易であろう。事件そのものよりも事件を取り巻く状況において、だ。

特に、当時のおたく文化には提供側の趣味もあって、極端に幼女を対象に据えて性的興奮を煽る内容が散見されたことから、このおたく文化の基盤であるアニメーション産業に対する、バッシングにまで発展している。
これらバッシングはエスカレートし、挙句にはワイドショーでレポーターが、コミックマーケットに来た人々を宮粼勤と同類扱いする事態(「皆さん、ここに10万人の宮粼勤がいます!」と発言。)にまで発展した。一連のバッシングは恣意的になされたものがエスカレートしたという一面もあるが、結果としてこの事件がきっかけで、世間一般においてのアニメや特撮番組、そしてそれを好む人(オタク)に対するイメージは著しく悪化した。21世紀に入ってオタク系漫画と通常の漫画との境が曖昧になってきたこと、メディアでのオタクやオタク文化の露出機会が増えたことなどで、オタクやアニメに対するイメージは変わりつつある。しかし、それでも幼女に対する性犯罪など発生した時には、たとえ事件と無関係であっても何かとオタクやオタク文化がバッシングされる傾向にある。大谷昭宏の「フィギュア萌え族犯行説」などがその典型である。



(中略)



保護者が子供をめぐる性犯罪に対して強い恐怖感を抱くようになった。




東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件 [ウィキペディア]


こんなことは過去のことではないし、現に欧米では「特定の幻想」に対する「規制」が高まってきている。 
最近イギリスで「暴力ポルノ」にアディクトしていた男が、女性教師に対し性暴力を加え殺害した事件が大きく報じられた。これは「ポルノ」という「幻想」が実際に「行為」に及んだ事例として、英国内では、「暴力的な性行為のあるポルノ規制」につながっている。

'Extreme' porn proposals spark row [BBC NEWS]

His barrister, Christopher Sallon QC, asked him at one point: "The suggestion is you were acting out a fantasy from a pornographic image that you accessed with the internet? Were you charged up and sexually aroused by Jane Longhurst, dead, with a ligature on?"

裁判では、被告が犯行に及ぶ一時間前に暴力的な性描写のあるウェブサイト(violent porn websites )を見ていたことが明らかにされた。被告はそのようなサイトから画像(images、pictures) を大量にダウンロードしていた。弁護士は被告に尋ねる「あなたはウェブサイトから得たポルノグラフィックなイメージの幻想(fantasy)を実際の行動に移した(acting out)のでしょうか?」と。

After the original trial Miss Longhurst's mother, Liz, organised a petition of 50,000 people and succeeded in persuading the home secretary to introduce legislation banning the downloading and possession of violent or "extreme" pornography.


She said: "I feel pressure should be brought to bear on internet service providers (ISPs) to close down or filter out these pornographic sites, so that people like Jane's killer may no longer feed their sick imaginations and do harm to others."


Ms Longhurst's former partner Malcolm Sentance said at the time: "Jane would still be here if it wasn't for the internet."

被害者の遺族が中心となって「暴力ポルノグラフィー」を規制する動きが高まりみせた。社会問題化した。署名も集まり、政府もそれに応え、法案提出に至った。
もちろん反対も多いのだが、しかし殺人犯人が犯行=行為に及ぶ前に、ポルノ=幻想を見て、しかもその幻想の通りに被害者に性暴力を加えた事実は重大で、遺族側の「ポルノ(この場合はインターネット)がなかったら、娘は死ななかった」という考えを「人びと」は「支持」している──このことが重要である。


Mother's anti-porn fight praised [BBC NEWS]

Home Secretary Jacqui Smith told the Commons Mrs Longhurst's campaign had brought "the necessary pressure" for possible changes to the law.




Her mother has campaigned for legislation to ban the downloading and possession of violent or "extreme" pornography.

The ban was included in the Criminal Justice and Immigration Bill announced by the government last month but it still has to be approved by Parliament.

被告には終身刑の判決が下った。内務大臣は下院で被害者の母親が行ったキャンペーンを讃えた──ヴァイオレント・ポルノ禁止へ向けての法改正は、彼女の”fight ”が不可欠であった、と。





にゅーあきばどっとこむ」の<言説>は、冷静になってから、別の話題でも「再利用」したいと思う。



つうかトラックバックはなぜ表示されないんだ? アタマにくるなあ。