HODGE'S PARROT

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ピエール=ローラン・エマールの『交響的練習曲』と『謝肉祭』



ピエール・ブーレーズ率いるアンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーで、オリヴィエ・メシアンの『幼子イエスに注ぐ20のまなざし』やジェルジ・リゲティの『練習曲』などを得意とするピアニスト、ピエール=ローラン・エマール(Pierre-Laurent Aimard)ならば、ロベルト・シューマンを弾いたとしても、どんな演奏になるのか、なんとなく予想がつく。

Carnaval Etude Symphonique

Carnaval Etude Symphonique


ブルーと白を基調としたジャケットが涼しい。清々しい。シューマンの作品の中でも、とりわけ「暑苦しい」=技巧的な『交響的練習曲』 Op.13 と『謝肉祭』 Op.9 が、このジャケットのように、清々しくもクールに演奏されている。濃厚なロマンや悲痛な暗さとは無縁だけれども、このCDからは研ぎ澄まされたピアノの美しい響きが聴こえてくる。流石だと思う。
例えば、明白に技巧的である──演奏至難に聴こえる『謝肉祭』の「パガニーニ」をやすやすと奏するだけではなく、楽譜を見て、実際に弾いてみて「実は超絶技巧」だと唸ることしきりの「めぐりあい」を、作曲者の指定通りのピアニッシモでクールに弾く。これにこそがエマールというピアニストの本領発揮であろう。
無論、物足りなさもある。が、ここまで徹底していれば、文句のつけようがない。これがエマールのシューマンだからだ。

ちなみに『交響的練習曲』では、遺作の変奏曲を、練習曲7と練習曲8の間にまとめて入れる方式を取っている。
面白いのが『謝肉祭』だ。エマールは「スフィンクス」を弾いているのだが、ここをスタッカートでぶっきらぼうに鳴らしている──そんな風に聴こえる。ここだけを聴くと、なんだかまるでウェーベルンの音楽のようだ。