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「グローバル・セキュリティ」と「戦術データリンク」



松村昌廣『軍事情報戦略と日米同盟 C4ISRによる米国支配』(芦書房)の序論で、アメリカの軍事情報通信システムに関する「基本的な」情報入手方法が記されている。参照したい。

軍事情報戦略と日米同盟―C4ISRによる米国支配

軍事情報戦略と日米同盟―C4ISRによる米国支配



なんといってもバージニア州アレキサンドリア市にある非営利団体「グローバル・セキュリティー/Global Security」のウェブサイトである。著者によれば、包括的でコンパクトな情報が得られ、全体像を把握するのには「ここしかない」ようだ。

[GlobalSecurity.org]


では、この「グローバル・セキュリティー」から的確な情報(reliable source of background information and developing news stories)を得るために、このウェブサイトの構造を確認したい。
まず、第一に、グローバル・セキュリティーは軍事情報通信システムを5つのサブシステムに分類する。

  • 巨大なシステム全体を統合し利用可能なものとする「中核(Core)システム」
  • いかなる情報を収集するか、そして、その優先順位を決める「情報収集指令(Tasking)システム」
  • 多様な組織に属する様々な施設、プラットフォームからなる「情報収集(Collction)システム」
  • 収集した情報を利用可能な形にする「情報処理(Processing)システム」
  • 情報を利用者に届ける「情報伝達(Dissemination)システム」

Intelligence Programs and Systems [GlobalSecurity.org]


次は、その個別のシステムを管轄する組織で分類する方法である。こちらも5つの分類がある。

  • 国家レベル(National)
  • 統合参謀本部(Joint)
  • 陸軍(Army)
  • 海軍(Navy)
  • 空軍(Air Force)

→ex; Core Intelligence Programs and Systems [GlobalSecurity.org]
 

さらに「中核システム」を除く四つのサブシステムを「収集される情報の種類」によって分類。

  • Multi-INT(複合的な諜報)
  • SIGINT(信号諜報)
  • IMINT(画像諜報)
  • Other(その他の諜報)

Intelligence Processing Programs and Systems [GlobalSecurity.org]



これは一般的な情報収集分類にあたる、信号諜報(SIGINT:Signals Intelligence)、画像諜報(IMINT: Imagery intelligence)、人的諜報(HUMINT: Human intelligence)、計測・痕跡諜報(MASINT:Measurement and Signature Intelligence)、公開情報(OSINT:Open Source Intelligence)などを分類し直したものだ。

[List of intelligence gathering disciplines]

軍事情報通信システムの目的は、敵の意図や能力を把握し、敵に対する攻撃や敵の攻撃に対する防御を行うために、自国の部隊の行動を調整し、その行動の正確さを確保することにある。現在の技術レベルでは、この目的に単一の情報通信システムで対処するのは不可能である。「戦略・作戦情報」は敵の意図や能力の全体像を知り、作戦全体の状況や地理的に大きな広がりを持つ戦域もしくはそれ以上の「大状況」を捉えるために必要である。

「戦術情報」は限定された戦場での「小状況」を正確に把握するためになくてはならない。「戦略・作戦情報」には極秘情報を取り扱う統合世界諜報通信システム(JWICS:Joint Worldwide Intelligence Communication System)が含まれ、「作戦情報」には敵・味方の概括的な部隊配置や移動を示す「作戦ピクチャー」を供給するGCCS(全地球指揮統御システム)などがある。


他方、「戦術情報」とは、戦場もしくはその付近に存在するプラットフォーム(戦艦や航空機など)のセンサー(レーダーを含む)が直接探知する敵・味方の正確な部隊の配置・移動に関する戦術データとそれに基づく「戦術ピクチャー」である。
いかなる場合も、個別の部隊が独自のセンサーにより直接収集するのは「戦術情報」であり、これが様々な部隊が持つ「戦術情報」とその他の方法によって収集された情報とともに加工、統合、融合された場合に「戦略・作戦情報」となる。したがって、「戦術情報」と「戦略・作戦情報」は峻別されるが、後者を構成する一部には前者からの生データが用いられている。また、作戦の展開によっては、特定の部隊が有する「戦術情報」が勝敗を決するという意味で戦略的に重要な価値を持つことがあるのは言うまでもない。




松村昌廣『軍事情報戦略と日米同盟』 p.14-15


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