HODGE'S PARROT

はてなダイアリーから移行しました。まだ未整理中。

エド・ミリバンドと「レフト・ブック・クラブ」



nofrills さんの「保守党が左傾化している?!」というエントリーを読んでいて、ちょっと気になった名前が出てきた。
エド・ミリバンド/ Ed Miliband 。労働党員で、現在、第三セクター担当の閣外大臣を務める1969年生まれの経済学者。nofrills さんも書いているように、ゴードン・ブラウン蔵相のスピーチライターの経験もある俊英だ。ユダヤ系で、彼の兄デイヴィッド・ミリバンド/David Miliband (1965年生まれ)もブレア政権で閣僚*1を務めている。いわゆる「ブレア派」(Blairite)だ。


[Ed Miliband MP]

で、このミリバンド兄弟って、どこかで聞いたことがあるなと思っていたら、マルクス主義政治哲学者として著名なラルフ・ミリバンド のご子息──ちょっとブルジョワっぽい言葉かな(笑)──だった。
[Ralph Miliband (1924 - 1994)]

Though still a Marxist theoretician, Miliband was on the critical New Left during the 1950s, alongside the likes of E.P. Thompson and John Saville, with whom he launched the New Reasoner and the New Left Review. He also set up the Socialist Register and was a friend of the American sociologist C. Wright Mills. He left the LSE in 1972 to take up the post of Professor of Politics at the University of Leeds and subsequently held several posts in Canada and the US.

Ralph Miliband And The Politics Of The New Left

Ralph Miliband And The Politics Of The New Left


[New Left Review]


学生の頃、読んだ「記憶」がある。いちおう邦訳は以下。


それとラルフ・ミリバンドの日本における紹介者・訳者として、田口富久治氏の名前を挙げておきたい。ウィキペディアには

丸山眞男の盟友であり行政学者であった辻清明に師事する。丸山に代表される近代主義的政治理論のマルクス主義による内在的な批判を意図。日本共産党の党員であったが、ユーロコミュニズムの立場に近づき、『先進国革命と多元的民主主義』をめぐって不破哲三との間に論争を繰り広げた。その後、離党、丸山に近い立場をとるようになる。さらに、その後、C・B・マクファーソン、アンソニー・ギデンズを高く評価・紹介し、その影響を受けていることを公言している。

との記述があるように、田口氏の著書は、英国の社会主義労働党の政策を知る上で非常に参考になる。



それでエド・ミリバンドであるが、彼が運営している「Left Book Club」(日本語だと「左翼本倶楽部」だろうか)というオンラインの本の紹介&ブックレビュー・サイトに注目したい。

Our aim is to give all people the chance to contribute to political debate. We want academics and politicians to come together with the public to share their ideas.


We want you to get involved and have your say.

ミリバンドさんは、「Left Book Club」の趣旨として、すべての人に政治的な議論のチャンスを与えたい、学者と政治家が「アイデア」をシェアしたい、と述べる。
最近の記事を読むと社会学者のリチャード・セネット/Richard Sennettの著書が取り上げられており、「エドとリチャード」の対談も近々 podcast で公開する予定だという。ちなみにセネットさんは、本当は、社会学者ではなく音楽家チェリスト)になりたかったのだそうだ。彼は『An Evening of Brahms』という小説も著している。

それでも新資本主義についていくか―アメリカ型経営と個人の衝突

それでも新資本主義についていくか―アメリカ型経営と個人の衝突


こういう取り組みを、学者としての研究&閣僚としての政治活動という忙しい最中においても、ウェブを通じて行っているというのが、とてもいい。しかもエド・ミリバンドさんは、なかなか魅力的な「メガネ男子」だし(笑)。
YouTube に映像があったけど、Embedding できないのでリンクだけ。


[関連記事]

*1:DEFRA;Department for Environment, Food and Rural Affairs、環境・食糧・農村省