イリヤ・ラシュコフスキー第4位、エリザベート・コンクールファイナル

第1位 Anna VINNITSKAYA／アンナ・ヴィニツカヤ
第2位　Plamena MANGOVA／プラメナ・マンゴーヴァ
第3位　Francesco PIEMONTESI／フランチェスコ・ピエモンテシ

という結果になった。

Anna VINNITSKAYAさんは、プロコフィエフの2番というメカニカルで多少グロテスクな曲を、見事に爽快に弾ききった。フランツ・リストのピアノ協奏曲第2番を弾いたプラメナ・マンゴーヴァさんには、この選曲にして、しかし聴く者を惹き込む力量があった。メガネ男子 Francesco PIEMONTESI さんのブラームスの第2番もスケールが大きく感動的だった。
しかし、個人的には、エリザベート王妃国際音楽コンクール2007のヒーローは第4位入賞の Ilya RASHKOVSKIY／イリヤ・ラシュコフスキーに決まりだ！

イリヤ・ラシュコフスキーの弾くラフマニノフのピアノ協奏曲第3番ニ短調 Op.30 は素晴らしかった。技巧の冴え、力強い打鍵、そして甘美なリリシズム。彼には人を惹きつける魅力がある。

国際コンクールの決勝という空前絶後の状況も相俟って、その演奏は実にスリリングだった。あの第1楽章のカデンツァ、第2楽章の哀切を込めた美しいアダージョ、第3楽章の壮大なフィナーレ。聴かせる。

これまでラフマニノフの3番は古くはアシュケナージ＆プレヴィン盤、最近（でもないか）はブロンフマン＆サロネン盤を愛聴していたが、ここにラシュコフスキーの演奏が加わった。前半で弾いたシューベルトのピアノソナタ第13番、セミ・ファイナルで弾いたベートーヴェンのソナタ第31番、ブラームスの『パガニーニの主題による変奏曲』、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番も一級の演奏と言えるだろう。なぜ彼が第4位なんだ、と買ったばかりのVAIOの液晶をもう少しで壊しかけた（笑）。このエリザベート・コンクールを「踏み台」にして頑張って欲しい。

イリヤ・ラシュコフスキーのプロファイルは以下が詳しい（インタビュー映像付き）。

Ilya RASHKOVSKIY 1984, Irkutsk (Rusland)

シンガポールのコンサートレビューから。ラシュコフスキーの略歴──とくに2005年の香港国際ピアノ・コンクール優勝時のことや、レパートリー、彼が好きなピアニストについても触れられている。

A few words with Ilya Rashkovskiy, 1st prizewinner, Hong Kong International Piano Competition 2005 [The Flying Inkpot]

この記事によると、ラシュコフスキーは、ウラジミール・クライネフ国際コンクール（Vladimir Krainev Piano Competition in Kharkov）では、ショパンのピアノソナタ第2番、プロコフィエフのソナタ3番などを弾き、ファイナルではショパンのピアノ協奏曲第2番を弾いた──第1位。香港国際ピアノ・コンクールでは、モーツァルトの24番協奏曲にラフマニノフの3番協奏曲を弾いた──優勝。コンクール後の北京と上海でのリサイタルは、ベートーヴェンのピアノソナタ第32番、シューマンの『交響的練習曲』、ラフマニノフのピアノソナタ第2番という「タフな」プログラムだった。さらにバッハやリゲティもレパートリーに入っているという。
好きなピアニストについては、「若い頃」はリヒテルを崇拝、グレン・グールドも尊敬していた。ただしバッハについては、グールドよりもロザリン・トゥーレットの方が好み。ホロヴィッツやルービンシュタインは言うまでもない。現在活躍しているピアニストではミハイル・プレトニョフを良く聴くのだという。
イリヤ・ラシュコフスキーのCDは Amazon では見つからなかったけど、Alpha Omega という香港のレーベルから、リストの『ダンテを読んで』やバラキレフの『イスラメイ』を含む≪Piano Fantasies≫というタイトルの録音がリリースされているようだ。