HODGE'S PARROT

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エリザベート王妃国際音楽コンクール セミ・ファイナル



ピアノ音楽ファンは、多分、時間がある限り、時間の許す限りベルギーのサイトにネットをつなげていることだろう。
そう、現在ブリュッセルは、エリザベート王妃国際音楽コンクール(Queen Elisabeth Music Competition)ピアノ部門コンペティションの真っ只中にあり、その模様がネットでライブ中継され、さらに Video on Demand でも観ることができる──5月14日から19日に行われたセミ・ファイナルの演奏がすべて映像付きで観られるのだ。


[Queen Elisabeth Music Competition]


いちおう記しておくと、ビデオオンデマンド(Video On Demand)の場合、上記のオフィシャルサイトの右上の画像「Watch and Listen live」をクリック、すると別Window が開く。中央下の「Video On Demand (VOD)」をクリックして「select a candidate」で競技者を選ぶことによってその演奏を観ることができる。約50分の独奏(課題曲であるKris DEFOORTの曲、古典派ソナタ、任意の楽曲)+モーツァルトのピアノ協奏曲という審査対象=演奏がすべて配信されている。映像も音も素晴らしい。
しかもセミファイナルまでくると、出場者のレベルも高く、そのプログラムも多彩で(シューマン、リスト、ショパンラヴェルなどのピアニスティックな曲が多いのは言うまでもない)、ほとんど一人のピアニストの演奏会を聴いているような感じだ。

そして、演奏者はもちろんそうなのだろうが、見ているこちらでさえ、緊張が走る。ここから未来のスターピアニストが誕生するんだな、その瞬間に立ち会っているんだな、と。

たとえば『のだめカンタービレ』でクラシック音楽に興味を持った人なんかは、このストリーミング&PODCAST で「本場の」国際コンクールの雰囲気や醍醐味を味わえるのではないだろうか──野田恵や千秋真一、ターニャは「こういう世界」で活躍しているんだな、と。


まだ全員観ていないのだが──観られないのだが、スイスの Francesco PIEMONTESIさん(演目は、ベートーヴェンの31番ソナタシューマンの『幻想小曲集』)、ロシアの Ilya RASHKOVSKIYさん(ベートーヴェンの31番、ブラームスの『パガニーニ主題による変奏曲』)の演奏が印象に残った。



そして、ファイナリスト12人が発表された。

ファイナルは5月28日から6月2日にかけて行われる。


追記。François DUMONT という人の弾いた、モーリス・ラヴェルの『夜のガスパール』が素晴らしかった! 「オンディーヌ」の水際立った美しさ、普段CDで聴くときは跳ばす「絞首台」の緊迫感、そして「スカルボ」の超絶技巧!!! 要チェックだ。


追記2。日本の Hisako KAWAMURA さんが弾いたセザール・フランクの『前奏曲、コラールとフーガ』を聴いた。僕はこの曲大好きなんだけど、コンクールで聴けるとは思ってなかったので大感激。コラールでのあの情熱、フーガでの凄まじい盛り上がり、いやあ、感動した。


追記3。残念ながらファイナルに進めなかったけど、ロシアの Evgeny BRAKHMAN さんが弾いたラヴェルの『クープランの墓』は聴き応えがあった。「リゴードン」は豪快だったし「トッカータ」は同音連打が機関銃のようで、胸のすく演奏だった。


追記4。Ilya RASHKOVSKIY の二回目の視聴。これ、カメラクルーも音楽を分かって撮っているのか、ブラームスの『パガニーニの主題による変奏曲』で、例えば第13変奏のグリッサンドのような演奏困難な部分を、このピアニストがどう弾いているのかが、よく「見える」。さすがだ。多分DVDをリリースするんだろうな。


追記5。韓国の Hong-Chun YOUN さんの演奏。良かった。シューマンの『ダヴィッド同盟舞曲集』は、この長い曲を少しも飽きさせず聴かせてくれたし、ジョゼフ・ジョンゲン/Joseph JONGENの『演奏会用練習曲』は初めて聴いたのだけれども、とても面白かった。ショパンのバラード4番は凄い迫力! それと、参加者全員が弾くKris DEFOORT の曲も、これまで聴いた中でこの人が誠実かつ丁寧に弾いているような感じだった──楽譜の切り貼りは僕もやったことがあるので、ちょっと笑ったけど。


追記6。フランツ・リストソナタロ短調を弾いたベルギーの Liebrecht VANBECKEVOORT さん。曲が曲だけに、苦行僧、あるいは求道者のようだったな。最後は、ほとんど「孤独の中の神の祝福」の境地だった。


追記7。韓国の Miyeon LEE さんのリストもよかった。こちらは『ダンテを読んで』(巡礼の年≪イタリア≫)で、重低音が恐ろしいほど響いていて圧巻だった。ベートーヴェンの3番もドラマティックだった。それと課題曲である Kris DEFOORT の作品も、最初は印象派の亜流(失礼)のようだと感じていたけど、聴きなれてきたせいか、結構いい曲なんだな、と思えるようになってきた。


追記8。コンチェルトは視聴しないつもりだったのだけど、ロシアの Ilya RASHKOVSKIY さんの演奏は聴いておきたかった──そう、すっかりファンになってしまった。曲はモーツァルトの21番。しかもカデンツァは自前だ。やっぱり映像付きだと、あの優美な第2楽章が、よりエスプレシオーネに聴こえる。


追記9。韓国の Hyo-Sun LIM さんの演奏。ベートーヴェンソナタ3番、ショパンの「葬送ソナタ」ともに「濃い」演奏だった。表現したい内容が確固としてあるのだろう。堂々としていてスケールが大きかった。


追記10。メガネ男子 Vadym KHOLODENKO さんはウクライナの人。まだ十代のように見える。野心満々の競技者という感じじゃなくて、素朴な雰囲気。そんな彼にシューベルト「3つの小品」D.946 は合ってるかな、リリックな第2曲とか。うって変わってリストの『スペイン狂詩曲』は盛り上がった。


追記11。ベルギーの Philippe RASKIN さんは俳優のような面構え。ハンサムだ。この人がブラームスの『幻想曲』やラフマニノフの『楽興の時』を弾けば、それは「絵になる」。グールドを意識しているのかどうかわからないけれど、歌声も聴こえた。大袈裟な身振りは「演出」なんだろな。コンチェルト(20番ニ短調)は、弦がやたらと少なく室内楽のような響き。カデンツァは自作だ。ファイナルには残れなかったけど、どこかのレーベルからデビューできるんじゃないだろうか。