Piano Recital: Fantasie Kreisleriana Arabeske
- アーティスト: Robert Schumann,Jonathan Biss
- 出版社/メーカー: EMI Classics
- 発売日: 2006/10/16
- メディア: CD
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ライナーノーツ(英語)は、フリードリヒ・シュレーゲルの引用で始まる──原文のドイツ語と対訳の英語で。かなり本格的で、これはロベルト・シューマンに関する小論とも言えるだろう。
で、このテクストの最後の署名を見ると、Jonathan Biss となっている。そう、このアメリカのピアニスト、ジョナサン・ビス(Jonathan Biss、1980年生まれ)が自ら書いているものなのだ。
収録曲は、
テクニックについては言うまでもないだろう。≪幻想曲≫と≪クライスレリアーナ≫というシューマンの大曲を、メジャーレーベルからリリースする「資格」を得たアーティストのものだ。ピアノは──とくに≪幻想曲≫では──十分に鳴り響く。「ああ、いい音だな」とスピーカーから流れてくる音に耳をそばだてたくなる。
もちろん聴かせる演奏だ。≪幻想曲≫での起伏に富んだドラマは、ポリーニあたりと比較したくなる。第3楽章の叙情的な部分も美しい。素晴らしい演奏だと思う。
≪クライスレリアーナ≫は、奇数の楽章は速く、偶数の楽章はとくに遅いわけではないが、相対的に遅く感じられる。第1曲目は繰り返しなし──個人的にはそこがちょっと不満。第7曲は、恐ろしいスピードで指が鍵盤を駆け巡るっているのが、聴いていて、わかる。リアルな響きだ。しかし最後の第8曲は、じわじわとドラマを盛り上げる。
ただ、僕は≪クライスレリアーナ≫に対しては「暗い」、というか「奇怪な」イメージを抱いているので、その個人的な好みからすると、ビスの響きは「明るい」かな。これは純粋に好みの問題だ──というのも、最近、別のピアニストの「デビュー・アルバム」の≪クライスレリアーナ≫を聴いて、テクニックはともかく、その独特のピアノの響きの変化の様相に感心していたところだから。
ジョナサン・ビスは、「EMI Classics Debut Series」の第1作でも、シューマンのダヴィド同盟舞曲集 Op.6 を録音するなど、シューマンに対してはかなり思いいれがあるようだ。
- アーティスト: Ludwig van Beethoven,Robert Schumann,Jonathan Biss
- 出版社/メーカー: EMI Classics
- 発売日: 2004/03/16
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YouTube にある映像でも、彼はシューマンの音楽について熱く語っており、本当にシューマンが好きなんだな、というのが伝わってくる*1。
Jonathan Biss - Schumann Recital
眼鏡を掛けているせいだろうか、なんとなく理科系の大学院生を思わす風貌だ(そしてちょっとナードな感じ)。実際、ビスは音楽一家の生まれで、アカデミックな雰囲気もそこからくるのだろう。
シューマンに入れ込んでいる若手ピアニストとして今後も注目したい。
[Jonathan Biss]
- Jonathan Biss Biography [EMI Classics]
- Interview: A Talk with Classical Pianist Jonathan Biss [Secrets of Home Theater and High Fidelity]