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フランスと「反テロ法」

産経新聞社のパリ支局長、山口昌子氏の著書『大国フランスの不思議』に、フランスの「反テロ法」について論じられている箇所がある。参照したい。

オウム真理教に対する破壊活動防止法の適用が棄却された時、フランスなら「反テロ法が間違いなく適用される」とジョルジュ・フェネシュ仏検事職業協会長は、ややあきれ気味に指摘した。
フランスでもセクト新興宗教集団)の問題は徐々に社会問題になりつつある。大小合わせて約二百のセクトが存在する。これを取り締まる反セクト法はフランスにも存在しない。宗教の自由、政治の自由、思想の自由に反することになり、人権を保障したフランス憲法のみならず欧州条約違犯になるからだ。


しかし、問題があれば、民法、刑法、そして反テロ法を適用する。反テロ法は1982年に社会党政権が廃止した国家公安法廷に代わって1986年に誕生した。1985年の極左テロ集団、アクション・ディレクトによる連続要人テロに対応するには刑法だけでは不十分だということが判明したからだ。




『大国フランスの不思議』(角川書店) p.186

ジョルジュ・フェネシュ仏検事職業協会長によれば「オウムの行為は市民をテロの対象にすることで明らかに日本国家への破壊活動を行ったもので明らかなテロ行為」なのである。
そして反テロ法は、個人、団体を問わず、また政治、宗教など、その団体の性質は問わない。政府は解散命令も出せる。

それに、そもそも、フランスの場合なら、反テロ法を適用するずっと以前に当局が何らかの行動を起こしていたはずだ。フランスでは何人かの人間が集団生活をしていたら、警察はまず、不法滞在者の有無をチェックする。フランス共和国の国民は十八歳以上、すなわち選挙権を持つと同時に身分証明書の携帯が義務付けられる。外国人の場合は旅行者を除いて「滞在許可証」が必要だ。




p.187


さらに著者は、ペルーで起きた日本大使公邸占拠事件エールフランス航空機ハイジャック事件(Air France Flight 8969)を比較する。

一ヶ月余りを経過したペルーの事件に関して、フランス人は「フランスならこれほど、長い間待てない」とそろって言う。1994年のエール・フランス機乗っ取り事件の時、犯人グループ全員を射殺した特殊部隊GIGN(国家警察特殊鎮圧部隊)をとっくに派遣している、というわけだ。




p.188

山口氏によると、日本では国家と国民の関係が、フランスのそれに比べ曖昧で稀薄だという。その国家観の相違が、両国における危機管理の相違に繋がっている、ということだ。



[GIGN]

[アクション・ディレクト]

Action Directe has carried out some fifty attacks, such as a machine gun assault on the employers' federation headquarters on May 1, 1979 as well as attacks on French government buildings, property management agencies, French army buildings, companies in the military-industrial complex, and the state of Israel. They have carried out robberies or "proletarian expropriation" actions, and assassinations, killing Engineer General René Audran, the manager of French arms sales, in 1985. They were also accused of Georges Besse's 1986 murder, an execution allegedly justified because he was the former head of the French automaker Renault. However, they denied it during their trial. Besse was also former president of Eurodif nuclear company, in which Iran had a 10% share.

1986年 - ジョルジュ・ベス会長がテロリスト集団「アクション・ディレクト」に暗殺される


大国フランスの不思議

大国フランスの不思議