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エジプト人の元大学生、モサドに情報提供




海外で暮らすアラブ人の情報をイスラエルの情報機関モサドに提供していたとして、ムハンマド・アタルというエジプト人が、エジプト当局により逮捕、起訴されたという記事があった。

モサドにアラブ人情報提供、エジプト人の元大学生逮捕 [Yahoo!ニュース/読売新聞]

アタル被告は在学中の2001年8月、トルコを訪れた際、モサド工作員に勧誘され、トルコ在住のエジプト人や他のアラブ人に関する情報を提供。その後、モサドの依頼で03年にカナダに渡って銀行に就職し、現地のアラブ人の情報を提供するとともにモサドへの協力者勧誘にも関与、報酬として5万6000米ドルを受け取っていたという。


別に珍しいことではないだろう。そういえば、以前「モサド、勧誘工作の手口」というエントリーで触れたビクター・オストロフスキー&クレア・ホイ著『モサド情報員の告白』には、こんなことが書かれてある。

勧誘というものは、岩を山の上から転がし落とすのに似ている。われわれはレダルデルという言葉をよく使ったが、これは山の上に立って、丸石を押して落とすことを意味する。それが勧誘というものだ。誰かに目をつけ、徐々に不法ないし不道徳的な行為に誘いこむ。相手を山の上から突き落とすのだ。


しかし相手の身分が安定している場合、協力してもらえる可能性は少ない。利用したくても出来ない。目的は、まさしく人を利用することにある。しかし人を利用するためには、相手を型にはめ込まなくてはならない。かりにある男が酒は飲らず、セックスにも執着がなく、金を必要とせず、政治がらみの問題がなく、人生に満足していたら、勧誘など無理だ。諸君の仕事は、反逆者相手だ。エージェントは、いかに理屈をこねようとも、反逆者である。諸君は最悪の種類の人間を相手にしているのだ。われわれは脅迫しない、とよく言う。それには、およばないのだ。われわれはきれいな仕事だなどという者は、一人としていない。




モサド情報員の告白』(中山善之 訳、TBSブリタニカ) p.139


それにしても、アタル被告の「スパイ活動」はどうして明らかになったのだろう──エジプト当局は、いかにして「情報」を摑んだのだろう。そのほうが気になる。