HODGE'S PARROT

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ブエノスアイレスのマリア




アストル・ピアソラ(Astor Piazzolla、1921-1992)作曲、オラシオ・フェレール(Horacio Ferrer、1933-)台本によるタンゴ・オペリータ『ブエノスアイレスのマリア』(Maria de Buenos Aires、初演1968年)を聴く。

ピアソラ:ブエノスアイレスのマリア

ピアソラ:ブエノスアイレスのマリア


登場「人物」は、語り手の小悪魔(オラシオ・フェレール)、マリア/マリアの影(女声、フルア・センコ)、バジャードールの声/夢みる雀のポルテーニョ/古き大盗賊/第1精神分析医/あの日曜日のひとつの声(男声、ハイロ)。
演奏はヴァイオリンのギドン・クレーメルバンドネオンのペル・アルネ・グロルヴィゲン他。


楽曲は以下の通り。
第1部

  • 第1場:  アレバーレ(小悪魔)
  • 第2場:  マリアのテーマ(インストルメンタル
  • 第3a場: おかしなオルガニートへのゆがんだバラード(小悪魔/バジャールの声/コーラス)
  • 第3b場: わたしはマリア(マリア)
  • 第4場:  少女マリアによるカリエーゴ調のミロンガ(夢みる雀のポルテーニュ/マリア)
  • 第5場:  フーガと神秘(インストルメンタル
  • 第6場:  ワルツによる詩(マリア)
  • 第7場:  罪深いトッカータ(小悪魔)
  • 第8場:  下水道の古い盗賊たちの場末の懺悔の歌(古き大盗賊/マリア/コーラス)

第2部

  • 第9場:  マリアの最初の死による葬儀のコントラミロンガ(小悪魔)
  • 第10場: 暁のダンガータ(インストルメンタル
  • 第11場: 街路樹と煙突に寄せる手紙(マリアの影)
  • 第12場: 精神分析医たちのマリア(コーラス/第1精神分析医/マリアの影)
  • 第13場: 詩人で酔った小悪魔のロマンサ(小悪魔/コーラス)
  • 第14場: アレグロ・タンガービレ(インストルメンタル
  • 第15場: 受胎告知のミロンガ(マリアの影)
  • 第16場: タングス・デイ(神のミロンガ)(あの日曜日のひとつの声/小悪魔/マリアの影/コーラス)

アルゼンチンに生まれたマリア=タンゴは、様々な「経験」をし「変化」していく。このタンゴによる──オペラ的な──音楽劇は、「彼女」の生、栄光、苦悩、そして復活を物語ったものだ。甘美で情熱的でノスタルジックな音楽が繰り広げられる。かのナディア・ブーランジェに師事したピアソラの、タンゴへの愛──音楽への愛が滲み出た傑作である。


YouTube にはアルゼンチンの歌手アメリータ・バルタール(Amelita Baltar)が歌う「受胎告知のミロンガ」の映像があった。素晴らしい歌唱! 素晴らしい表現力! まさに惹き込まれる。
Piazzolla Baltar Maria de Buenos Aires


わたしはマリア
ブエノスアイレスの、
ブエノスアイレスのマリア、わたしはわたしの街!
マリア・タンゴ、場末のマリア
夜のマリア、死を招く情熱のマリア
ブエノスアイレスの愛のマリア、
それがわたし!



第3b場「わたしはマリア」(ブックレットより、高場将美 訳)

しっかりマリア、
9つの涙は
混血の神秘なのだから、
おまえは穂となって実るのだ
なんて固い空の枝がおまえをきしませること
しっかり、もう生まれるぞ、
しっかり、苦しめ、
アィ!……


(ハミング)


わたしはあまりの
やさしさに満たされたので
ただひとつのやさしさから神様でも産める!



第15場「受胎告知のミロンガ」

Amelita Baltar

Amelita Baltar


クレーメルは、解説で、「わたしはベートーヴェンブラームスシューマンのすべてのソナタモーツァルトの協奏曲全曲、そしてシュニトケのほとんどすべての協奏曲を録音してきた。『マリア』の録音はしかし、そのなかでも特別の意味を持ちつづけるだろう」と述べている。