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アメリカ新国防長官に元CIA長官指名




ブッシュ大統領は8日、ホワイトハウスで会見し、対イラク政策の責任者だったドナルド・ラムズフェルド国防長官(74歳)を更迭した。そして後任に、元中央情報局(CIA)長官ロバート・ゲーツ氏(63歳)を指名した。
ゲーツ氏は第13代CIA長官で、在任期間は1991年から93年まで。CIA史上、初の情報本部出身だった。

情報戦生き抜いたプロ ゲーツ新国防長官 テロ戦、厳しい姿勢 [Yahoo! ニュース/産経新聞]

「情報工作は暗いプリズム越しに世界を見ること」。更迭されたラムズフェルド米国防長官の後任に指名されたロバート・ゲーツ氏は、中央情報局(CIA)生え抜きの情報のプロで、非情な世界を生き抜いて語った“ゲーツ語録”でも知られる。ブッシュ現大統領の父の政権時に、長官としてソ連崩壊に立ち会っている。


 ソ連が米国の脇腹に弾道ミサイルを突きつけた「キューバ危機」(1962年)の緊張に包まれて学生時代を過ごした。ジョージタウン大学院での専攻はロシア・ソ連史。66年に米中央情報局(CIA)に採用され、ソ連情報の分析を専門にキャリアを積み上げた。

CIA時代には、有能な情報のプロである半面、同僚との摩擦も多かったようだ。「情報工作とは特殊で暗いプリズム越しに世界をみること」「花の香りを嗅(か)いだら、スパイなら棺おけがないか見回せ」といった“ゲーツ語録”が、情報の世界で語り継がれている。


CAP's Larry Korb: Rumsfeld Out - Gates in at Pentagon on CNN



Profile: Robert Gates [BBC NEWS]

CIA career



Mr Gates, 63, has spent most of his career as an official at the Central Intelligence Agency, where he rose to become director of the agency under the first President Bush in 1991, a position he held until 1993.


Mr Gates' early career was dogged with controversy, particularly over the Iran-Contra issue, and his first nomination as CIA director was withdrawn by Ronald Reagan in 1987.


He is currently the president of Texas A&M University, one of the largest universities in the United States.


He was reportedly the first choice of President George W Bush to become the US intelligence czar in 2005, an appointment which eventually went to John Negroponte after he turned it down.


That post was created to rectify weaknesses in co-ordinating US intelligence after 9/11, but Mr Gates expressed concern that the post might not have the clout needed to be effective.

From the Shadows: The Ultimate Insider's Story of Five Presidents and How They Won the Cold War

From the Shadows: The Ultimate Insider's Story of Five Presidents and How They Won the Cold War


ワシントン・ポスト』によれば、カーター民主党政権時代に国家安全保障担当として大統領補佐官を務めていた──つまりゲーツ氏のボスであった──ズビグニュー・ブレジンスキー氏も、今回のゲーツ氏国防長官指名を「ブッシュ大統領がこの6年間で行った最高のこと」と激しく歓迎した模様。ブレジンスキーロバート・ゲーツを大いに買っているようだ。
Robert Gates Lauded As Breaker of Barriers [Washington Post]

Zbigniew Brzezinski, who was Gates's boss as national security adviser in the Carter White House and today is one of the sharpest critics of the Iraq war, described the appointment yesterday as "the best . . . that President Bush has made in the course of his six years in office." Brzezinski described Gates as someone "whose judgment can be trusted and whose common sense is reassuring," and said that "this appointment may be marking the beginning of a major corrective in American policy towards the Middle East."


【主張】米国防長官更迭 イラク情勢の打開に期待 [産経新聞]

ゲーツ氏は現在、大学の学長を務めているが、ベーカー元国務長官らを中心とする超党派の政策提言集団「イラク研究グループ」の一員でもある。同グループは近く包括的政策提言をする予定で、ブッシュ大統領も重視している。提言を待ちたい。


 日本として気になるのは、ゲーツ氏がアジアの専門家ではない点と、ラムズフェルド長官の辞任で、長官が主導してきた米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)とそれに関連する日本国内の米軍基地再編問題にどのような影響が出るかという点だ。


大統領が超党派のイラク研究グループと会合、政策変更か [CNN]

スノー米大統領報道官は10日、イラク情勢の分析、助言作りに携わっている超党派の「イラク研究グループ」のメンバーが13日、ブッシュ大統領と意見交換する、と述べた。同グループはチェイニー副大統領、ハドリー大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、統合参謀本部のペース議長とも会うと語った。


イラク戦争の是非が主要争点になった先の中間選挙で与党・共和党は敗北しており、大統領とグループの会合は、イラク政策の修正につながる節目となる可能性がある。


イラク研究グループは今年3月に発足。独立的な立場からイラク問題を分析、中東地域での米権益に対する影響などを調べてきた。ベーカー元国務長官が責任者となっている。民主党のハミルトン元下院議員のほか、クリントン政権下で国防長官だったペリー氏も加わる。

ところで、国防長官のポストがラムズフェルドから元CIA長官ゲーツへと移譲することについて、ちょっとしたエピソードを思い出した。落合浩太郎『CIA 失敗の研究』(文春新書)の第6章”ブッシュの「改悪」”5節「独走するラムズフェルドと迷走したテネット」で論じられている部分で、それはラムズフェルド率いる「ネオコン国防総省側とCIA側の対立だ。
これによると、ラムズフェルドは2002年に情報担当の国防次官のポストを新設して、CIAの情報長官ジョージ・テネットの権威を低下させようと画策しようとしたのだという。しかもだ。ラムズフェルドはそれに先立って2001年にも密かに戦略影響室(OSI)も新設していた。

2002年末には、「ミニCIA」とも呼ばれる特別計画室(Office of Special Plans)が国防総省に設けられた。特別計画室にはラムズフェルド長官の側近が集まり、諜報機関もどきの分析グループを作り、CIAはそこにデータを提供するだけの下請けになって、都合のよい情報だけをつまみ食いし、微妙なニュアンスや疑問は切り捨てられた。イラク戦争をめぐる「情報の政治化」疑惑はこうして生まれたのだ。


(中略)


2002年8月に、ラムズフェルドやウォルフォウィッツ副長官と並ぶタカ派として知られる、ファイス次官以下数名の国防総省のメンバーがCIAを訪れた。テネット、CIAの幹部とアナリスト20名、DIA*1長官が同席した。CIAが収集した証拠を使って、DIAのアナリストにイラクアルカイダの関係を再分析させたのだ。その結果、両者の関係は1990年代前半に遡り、かつ深いものだとの結論になった。CIAの従来の見解とは対立するものだったが、テネットは反論しなかった。


2004年秋、アルカイダイラクの関係について、否定的なCIAの見解を覆す情報を捜し出すためにファイスが任命したマイケル・マルーフが国防総省を退職した。マルーフは度重なるリークで取り調べを受け、セキュリティ・クリアランスを剥奪されていた。

ラムズフェルドは、CIAの任務である人的諜報にもDIAを進出させようとしている。従来は軍人が各国の大使館の武官として情報収集を行ってきたが、対テロ戦争にはCIA同様に民間人に偽装する必要があるというのだ。




落合浩太郎『CIA失敗の研究』(文春新書)p.194-195

ラムズフェルドは明らかにCIAを軽視していた。「下請け」のように扱い、その「情報」さえ信用していなかった。それがどのような結果を招いたか。ロバート・ゲーツ元CIA長官の国防長官指名には注目したい。


CIA 失敗の研究 (文春新書)

CIA 失敗の研究 (文春新書)

*1:国防情報局(Defense Intelligenca Agency)。国防総省傘下