ソ連ウクライナ出身のヴァイオリニスト、レオニード・コーガン(Leonid Kogan、1924-1982)の10枚組ボックスセットをやっと9割ほど聴いた……かな。Brilliant のこの「HISTORIC RUSSIAN ARCHIVES」シリーズ、貴重な録音があったりして凄く嬉しいんだけど、買ってもなかなか聴く時間が取れなくて。
Historic Russian Archives: Kogan Edition
- アーティスト: Leonid Kogan
- 出版社/メーカー: Brilliant Classics
- 発売日: 2006/10/03
- メディア: CD
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で、コーガンの演奏……よく言われるように「強靭」で、それはそれは迫力があるものだ。美音とは言い難いが力強い芯の通った音に圧倒される。指捌き弓捌きも凄い。ベートーヴェンの『クロイツェル』やグリークのソナタ第3番、ショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番は当然としても、サンサーンスの『序奏とロンド、カプリチオーソ』やラフマニノフのピアノ三重奏曲第2番も、ずっしりと重く聴こえる。
このボックスセットは10枚組ということで、有名なチャイコフスキーやベートーヴェン、モーツァルトの協奏曲、そしてマスネの『タイスの瞑想曲』やショーソンの『詩曲』といった定番中の定番ものだけではなく、他ではあまり聴けない作品も入っている。
例えば定番中の定番フランクのヴァイオリン・ソナタ……の管弦楽編曲版、そうコンチェルトになってる! またバッハの『シャコンヌ』を含むパルティータ第2番……これがデニソフのアレンジによる「ヴァイオリンと室内管弦楽のためのパルティータ」になって「デニソフ流の」現代音楽な響きを堪能できる。それと読み方が分からない Tikhon Khrennikov の協奏曲第2番、『カルメン幻想曲』はやはり定番のサラサーテの手になるもの……プラス Franz Waxman という人の『カルメン幻想曲』──こちらは行進曲から始まる──もある。
他にもサミュエル・バーバーやシマノフスキー、ヴュータン、ブロッホ、パガニーニ、クライスラー、ヴィエニャフスキー、シューベルト、シューマン、ドビュッシー、アルベニスと多種多彩な作品が演奏されている。
個人的に最も気に入ったのは、ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲だな。録音は決して良くないけど、指揮は作曲家自身という貴重なものだ。コーガンの超絶技巧に痺れた。
ちなみにウィキペディアによると、コーガンが使用していた楽器は「グァルネリ・デル・ジェズー」(Guarneri del Gesù )──1726年製の「エクス・コラン」(ex-Colin )と1733年製の「エクス・ブルメスター」(ex-Burmester)、弓はドミニク・ぺキャット(Dominique Peccatte)のフレンチ・ボウ。もちろんソビエト政府からの貸与品だ。