HODGE'S PARROT

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視覚的カデンツァ 〜オレ様

YouTube で音楽を「観て」いると、CDを聴くのとは大分違った「音楽の印象」を受ける。奏者の手の動きや表情──これは演奏会での印象とはまた違う。コンサートだと、サロンコンサートでもない限り、奏者の動きはともかく、表情までは見えないし、後ろの席だと弾き方なんて全くわからない。
だから全方位で観ることのできる映像は、面白いし、様々な発見がある。
とくにヴィルトゥオーゾ曲。なるほど、これらの音楽は、聴かせるだけではなく、見せる=魅せるものなのだ。たしかシュニトケの協奏曲に「視覚的カデンツァ」なるものがあったと思うが、ヴィルトゥオーゾ曲は全編これ視覚的カデンツァなのかもしれない。

というわけで、YouTube で最近観て面白かったものを挙げたいが、これだけじゃつまらないので、二ノ宮知子の『のだめカンタービレ』のキャラに「これってコイツ向きなんじゃないか」と勝手に結びつけてみた。


まずは千秋真一向け。もちろん「オレ様」系。先日も書いたスクリャービンエチュードOp.8-12 。キーシンホロヴィッツの演奏があった。この曲を聴くと「オレ様」の血が騒ぐ。

スクリャービンときたら次はラフマニノフだな。前奏曲Op.23 No.5。ノスタルジックで甘美な中間部を挟んだ荒々しい行進曲風の音楽。「オレ様」はこうじゃなくちゃ。演奏はギレリスで。

言うまでもなく、「オレ様」の音楽は、単に技巧的であるだけではなく、格調高くなくてはならない。というわけで、ブゾーニ編曲によるバッハの《シャコンヌ》。ヴィルトゥオーゾ曲の王道である。ファジル・サイの名演で。

たまたま見つけたセザール・フランクの《前奏曲、コラールとフーガ》。演奏者は知らない人。でもこの曲って厚化粧のロシアギャル、ターニャにぴったりじゃないだろうか。音楽も「ねっとり」として「クネクネ」して。

  1. http://www.youtube.com/watch?v=SeOBvtM4pvA&mode=related&search=
  2. http://www.youtube.com/watch?v=wIZ2sZeaxuM&mode=related&search=
  3. http://www.youtube.com/watch?v=Res-28YoV6g&mode=related&search=

とくに2番目のコラールなんか、テンポは遅いが、弱音から次第に盛り上がっていき、両手を交差させながら、クライマックス至るところなんか、かなりエロティックな感じ。これも魅せる。


そして野田恵。ぴったりなのは、もちろんフランツ・リストの超絶技巧練習曲。ピザ屋でいきなり「超絶」を弾いちゃうくらいなんだから。まずは1番と2番。

これ、ディミトリス・スグロス(Dimitris Sgouros)の演奏。懐かしい。天才少年と呼ばれた、あのスグロスだ。僕も10番を練習するときに買ったのが、このスグロス盤だった──こんな風に弾けねーよと思ったけど。


「超絶」はベレゾフスキーの演奏がまとまって観られる。《マゼッパ》、《10番》、《雪嵐》はこちらで。


「超絶」ときたら、同じくリストの《メフィスト・ワルツ》を挙げないわけにはいかない──まあーこちらは千秋真一向けの「オレ様」系だけど。スグロスの物凄い演奏で。ホント凄い!(ぜひ観てくれたまえ。震えてくれたまえ。この燦然と輝くピアニズム。アポロンの陽、そしてディオニソスの陰。ニーチェの言う「感官の代理」。ピアノとは、ここまで弾かなければならないのか、ここまで命を賭けなければならないのか、千尋の谷底へ……佐久間学の口調で)


それと演奏しながら作曲してしまう「のだめ」向けに、ゴドフスキー編曲のショパンなんてどうだろう。「木枯らしのエチュード」がこんなになってしまうなんて……。アムランの爆演で。