HODGE'S PARROT

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クロイツェル教本より

のだめカンタービレ』の影響で、またヴァイオリンを弾きたくなった──きちんと先生について練習したい、オーケストラで演奏したい。
というわけで、練習曲の楽譜を引っ張り出してきた。『フリマリー』『カイザー』『クロイツェル』『セビシック』……。

ISE(ヴァイオリン) クロイツェル教本 42 Etudes (ISEシリーズ)

ISE(ヴァイオリン) クロイツェル教本 42 Etudes (ISEシリーズ)


『クロイツェル教本』(KREUTZER 42 ETUDES)は、ヴァイオリンを習ったことがある人ならば一度はさらったことがあるだろう。 さまざまなテクニックを「合理的」に学べる名著……だと思う(昔は嫌いだったんだけど)。

読み返してみると、なかなか興味深いことが書いてある。一見、無味乾燥的なエチュードだけれども、各曲の意義や練習の仕方が的確に指示されている。なるほど、「この指示」に従えば──従っていれば、ヴィルトゥオーゾヴァイオリニストになれる/なれたのかもしれない。
少し引用してみよう(直訳調の文体も味がある)。

この2番は基本となる練習曲ですから丹念に勉強しなさい。最初に音程をしっかり覚えるために二音ずつスラー、次に四音ずつのスラーで練習するのもよい事です。そしてこの曲は(1)特にデタッシュ*1を弓の各部分でよく練習しなさい。
例えば弓の先1/3、中1/3、元1/4、それから中半弓、先半弓、元半弓、全弓等で、また弓の元で胸を少しも動かさず手首の運動だけで弾いたり、同じ要領で弓の先端で弾いて見る等、色々な方法で練習することが大切です。次に(2)レガート*2、(3)スタカート*3、(4)マルテラート*4、(5)サルタート*5、(6)スピカート*6等種々な運弓法で練習すると非常に役立ちます。最後に今迄様々な替弓の練習をしなかった生徒は、上の小譜の中から出来るだけ多くの替弓の練習を選んで勉強するとよいのです。
練習は全く美しい音でしっかりした弓使いができる迄忍耐強く何回も繰返し行うべきです。とくに替弓奏法では、リズムがくるったり不均等な音や不自然なアクセントがついたりしないように注意しなければなりません。


練習の初めに弓のどの部分をいかに使うか等、考えることが大切です。教師は各々の生徒によって必要と思われる弓を選んで練習させてください。



第2番

最もためになる練習で、まず左指は初めから各弦上に押さえておいてひきだすのです。弓をしっかり持ちスラーのある移弦には滑らかにひき、スラーのない移弦はハキハキと音を出します。弓が隣の弦に移る時、速度や圧力に変化が起こったり、また必要以上に傾斜して不自然な強弱ができないように注意しなさい。
最初は下膊部の運動で、次に手首だけの練習もしなさい。またスラーのない音は、後にスピカートで練習することもよいでしょう。この曲では替弓の練習もいろいろな方法で丹念にしておくと、いっそう役立つ練習となります。おそいテンポの時の弓先の移弦は上膊運動で行い、速いテンポの時は手首で行います。けれども弓先ではテンポが速くなるにつれて弓をしっかり持って、肘関節の所で前腕を廻すようにしてひきます。



第13番

これは32番からのダブルの奏法の練習で一番難しい曲ですが、これを正確に勉強しておくと、バッハの無伴奏ソナタを弾く時にも大いに役立つでしょう。左手ができても音がでにくいのは弦に対する弓の接触や圧力が悪いためですから、その点をよく注意して練習することが大切です。



第41番

のだめカンタービレ 2007年カレンダー ([カレンダー])

のだめカンタービレ 2007年カレンダー ([カレンダー])

*1:Détaché、分割奏法。各音をきわ立たせてひく

*2:Legato、円滑奏法。音を滑らかに続けてひく

*3:Stacato、点奏法。弓を速くひき、鮮明な音を出して区切る。

*4:Martellato、突弦奏法。弓先で明瞭に音を切ってひく強いスタカート

*5:Saltato、中庸跳躍奏法。弓の根元を用いたあまり速くない重い飛跳奏。以上『カイザー1』より

*6:Spiccato、いわゆる「飛ばし」。音を弾ませる