HODGE'S PARROT

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組曲《惑星》からも冥王星除外か

せっかくサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団が「冥王星付き」《惑星》をリリースしたのに……。


冥王星外し、惑星数8に 国際天文学連合が新定義 [goo ニュース/朝日新聞]

チェコプラハで総会を開いている国際天文学連合(IAU)は24日午後(日本時間同日夜)、惑星の新しい定義案について採決し、太陽系の惑星を「水金地火木土天海」の8個として冥王星を惑星から外す案を賛成多数で可決した。冥王星は1930年の発見から76年で惑星の地位を失い、世界中の教科書が書き換えられることになった。


 総会に提示された四つの決議案の採決の結果、冥王星は、惑星とは別に新しく設けられた「矮(わい)惑星」というジャンルに入ることになった。冥王星を含む海王星以遠の天体を総称して「プルートニアン(冥王星族)天体」と呼ぶ決議案は、否決された。

<太陽系惑星>冥王星を除外 賛成多数で最終案採択 IAU [Yahoo! ニュース/毎日新聞]

可決された定義は、太陽系惑星を(1)自らの重力で球状となる(2)太陽を周回する(3)軌道周辺で、圧倒的に支配的な天体――と定義した。水星から海王星までの八つが惑星となる。軌道周辺に同規模の天体があり、3番目の条件を満たさない冥王星は惑星から外れた。
 冥王星を惑星として存続させる主張も根強く、水星から海王星までの八つを「古典的惑星」とする一方、自らの重力で球状となるが、軌道周辺で圧倒的ではない天体を惑星の一種の「矮(わい)惑星」と位置づけることで、冥王星を惑星の地位にとどめる対案も提出されたが、否決された。

Pluto vote 'hijacked' in revolt [BBC NEWS]

The need for a strict definition was deemed necessary after new telescope technologies began to reveal far-off objects that rivalled Pluto in size.


The critical blow for Pluto came with the discovery three years ago of an object currently designated 2003 UB313. Discovered by Mike Brown and colleagues at the California Institute of Technology, 2003 UB313 has been lauded by some as the "10th Planet".


Measurements by the Hubble Space Telescope show it to have a diameter of 3,000km (1,864 miles), a few hundred km more than Pluto. 2003 UB313 will now join Pluto in the dwarf planet category.


Mike Brown seemed happy with Pluto's demotion. "Eight is enough," he told the Associated Press, jokingly adding: "I may go down in history as the guy who killed Pluto."


ま、もともと、グスターヴ・ホルストの《惑星》には海王星までしかなくて、したがってホルストの音楽は「完結した作品」になったわけだ。

この組曲には、冥王星が取り上げられていないが、これは作曲当時にはまだこの小さな星が発見されていなかったことに因る。冥王星アメリカの天文学者クライド・トンボーによって発見されたのは、この作品が完成した14年後の1930年のことである。
ホルストの没後半世紀以上経った2000年、イギリスの作曲家 コリン・マシューズによって『冥王星』(Pluto, the renewer )なる作品が発表されている。ハレ管弦楽団ホルストの専門家として知られる彼に依頼したこの作品は、ホルストの『惑星』を補う意味で書かれており、一つの興味深い試みではあろうが、しかしながら作風は著しく異なっており、この流儀が定着するかは未知数である。




惑星 (組曲) [ウィキペディア]


残念ながら、マシューズの「冥王星」(再生する者)を補う流儀は、これにて終了……。
そうだ、地球がなかった! コリン・マシューズさんには、ホルストが作曲しなかった惑星──「冥王星」を外して代わりに「地球」を作曲して欲しいぞ。これで《惑星》は完璧だ。



ラトル&ベルリンフィル盤は、コリン・マシューズ(Collin Matthews,b1946)の「冥王星」が付いているだけではない。実のところ、ホルスト《惑星》+「冥王星」だけだったら、このCDは買わなかっただろう──だってレヴァイン&シカゴ響やカラヤンウィーンフィルベルリンフィル両盤、マゼールフランス国立管弦楽団デュトワモントリオール響といった、スペクタクルからシリアスまで、スターウォーズ路線から後期ロマン派路線、仏印象派風路線といった多士多彩のアプローチが既にあるし。

なんと言っても、現役バリバリの現代音楽作曲家が、宇宙をテーマにした作品を競作していること──これにつきる。
フィンランド出身のカイヤ・ サーリアホ(Kaija Saariaho, b1952)の《小惑星4179~トゥータティス》は、さすがパリ電子音楽センター(IRCAM)で学んだだけあって、ブーレーズのようなキラキラ路線。微細な音が蠢く洗練された書法だ。


一番の若手マティアス・ピンチャー(Matthias Pintscher,b1971)は、最近、エッシェンバッハ&北ドイツ放送響による演奏で「メジャー」デビューを果たした。《オシリスに向かって》は、このホルストの「衛星」の中で個人的に一番のお気に入り。ヘンツェっぽい?


マーク=アンソニー・ターネイジ(Mark-Anthony Turnage,b1960)の《セレス》は、ホルスト路線を堅持している。土星天王星のようなメリハリがあって、いわゆる「現代音楽」のようには聴こえない。やはり英国の作曲家だ。

Blood on the Floor

Blood on the Floor


《コマロフの墜落》は、オーストラリアの作曲者ブレット・ディーン(Brett Dean,b1961)が、ソヴィエトの宇宙飛行士ウラディミール・ミハイロヴィッチ・コマロフ(Vladimir Mikhailovich Komarov)のソユーズ1号での墜落死にインスピレーションを得て音楽化したもの*1。劇的な音楽である。サウンドバルトークルトスワフスキのような感じ。

Dean. One of a Kind

Dean. One of a Kind


というわけで、既に《惑星》をいろいろと持っている人も、これら4人の4作品を聴くためにこのCDを買っても損はないだろう。「冥王星付き」よりも「小惑星付き」だな、このラトル盤の売りは。



付け足し。
地球と言えば、デュラン・デュランの『Planet Earth』があったじゃないか! 

Duran Duran

Duran Duran

  • アーティスト:Duran Duran
  • 発売日: 1990/10/25
  • メディア: CD
 



というわけで、コリン・マシューズさんには、ドビュッシー前奏曲集1、2』の全編曲完成に向けて勤しんでいただきたい。

La Mer

La Mer

  • 発売日: 2005/06/30
  • メディア: CD