HODGE'S PARROT

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同質の音楽の細やかな差異 ブルックナー




ブルックナー交響曲を1番から9番まで、プラス『テ・デウム』を聴いた。心地よい疲れだ(笑)。


演奏はカラヤン指揮&ベルリンフィル、ドホナーニ&クリーヴランド響、ジュリーニウィーンフィルバレンボイム&シカゴ響など。
『テ・デウム』(バレンボイム指揮)は久しぶりに聴いたけど、いきなりのハイテンションに圧倒される。この執拗な五度──実は以前オーケストラでやった──が堪らない。

ブルックナー交響曲は機能和声の極致であると言ってよい。彼が学びとり、マスターした和声技法を基礎に置き、そこから離れることなしに自己の音楽を彼は書きしるして行ったのである。
出発──緊張──到達(解決)という力学的アーチが、彼の交響曲では絶えずくり返されて行くが、そのようにくり返すこと自体には彼は何の疑義をはさむことなく、まじめに自己の技法をそこに展開させた。




アントン・ブルックナー交響曲第3番』(カラヤン指揮ベルリンフィルハーモニー管弦楽団、DG)の渡辺護氏の解説より

また、根岸一美氏は「ブルックナーの音楽の特質と魅力」として、「全交響曲に共通する三つの魅力 同質の音楽に細やかな差異を見つけてゆく楽しみ」を挙げている(音楽之友社『クラシック・ディスク・コレクション』より)。
その三つの魅力とは、

  1. 輝くブラスのサウンド
  2. クライマックスの形成
  3. 和声の持つ奥深い表出力

である。

まあブルックナー交響曲は、どれも似ているけど、やっぱり7番と9番、そして8番の第3楽章がとりわけ好きだな。

逝きものの平安が、遺されたものの悲しみを優しく慰めてくれたこの感応の一瞬を、私は生涯わすれまい。
音楽芸術は素晴らしい。カトリックブルックナープロテスタントブラームスもない。高貴な精神性の旋律が、私の、私たちの心をみたし、慰めてくれる。




前田明雄『ブルックナー交響曲  真・善・美──そして悲しみ』(音楽之友社レコード芸術』2000年9月号より)