ヴァイオリンと言えばストラディヴァリ、というくらい、ストラディヴァリは楽器市場の最強ブランドであるが、アントニオ・ストラディヴァリが製作したヴァイオリンは約1200、うち現存するのは約600、しかも良好な演奏状態を保っているのは、それよりずっと少ないようだ。
究極の造形美と崇高な音色、数々のミステリアスな伝説、そして希少価値。ストラディヴァリが非常に高価である所以である。
ストラディバリが製作した弦楽器には、“Antonius Stradivarius Cremonenfis”というラベルが貼られているところから、ストラディバリウス、あるいは省略してストラドなどと呼ばれる。イタリア人の名前としては「ストラディバリ(Stradivari)」であるが、当時の職人は自分の作品にプライドを込めてラテン語表記の「ストラディバリウス(Stradivarius)」と書き込んだのである。
また英語版の Wikipedia には、名の知れたストラディヴァリの一覧が掲載されており、それらの名器を現在誰が所有しているのか、かつて誰が所有/演奏していたのか、ということが一目瞭然だ。
- Stradivarius [Wikipedia EN]
ここで目を惹くのが「Nippon Music Foundation」という名称。これは「日本音楽財団」のことで、この本邦の財団が、希少で高価なストラディヴァリを複数所有しているのがわかる。
日本音楽財団は、「経済大国日本」が音楽を通して世界に貢献すべく1974年に設立された。所管官庁は文化庁芸術文化課。そして日本音楽財団は、財団法人日本船舶振興会(日本財団)の全面的なバックアップを受けている、ということも知っておいてよいだろう。
音楽文化全般の振興・支援を目指した日本音楽財団の活動の中で、「弦楽器の貸与事業」は、とくに重要なものである。ストラディヴァリウスやグァルネリウス・デル・ジェスといった名器を収集し、それを国内外のアーディストに貸与すること。これこそが「西洋クラシック音楽の発展」に日本が「貢献」できることであり、「欧米音楽界」からも注目を得ている「事業」だからだ。
日本音楽財団のウェブサイトには、所有している楽器の一覧と「楽器貸与事業」についての情報が公告されている。
とくに注目したいのは、東京クヮルテット(Tokyo String Quartet)に貸与している「パガニーニ・クヮルテット」(Paganini Quartet)だ。これは「地球上に6セットしかない」と言われるヴァイオリン2挺、ヴィオラ、チェロの計4挺による弦楽四重奏用のセット。ニコロ・パガニーニが収拾したため、この名がついた。財団のサイトのトップページも、この「パガニーニ・クヮルテット」が飾っている。
- アーティスト: Schubert String Quartets,Tokyo String Quartet
- 出版社/メーカー: Vox (Classical)
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そうそう、弦楽器専門月刊誌『the Strad』の2006年3月号の特集はストラディヴァリで、しかも「ヴィオッティ・ストラディヴァリ」(Viotti Strad)のポスター付きだった。
- Viotti Strad [Wikipedia EN]
このストラディヴァリは、ヴァイオリニスト/作曲家のジョヴァンニ・バッティスタ・ヴィオッティが愛した名器だったため、その名がついた。
ヴィオッティ・ストラドは2005年、英国王立音楽院(Royal Academy of Music)が350万ポンドで購入した。