HODGE'S PARROT

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シゲティのBWV1052 失われたヴァイオリン協奏曲を求めて




10枚組1500円前後という超バジェットプライスが売りの「Membran/ドキュメント」レーベルから、往年のヴァイオリニストの演奏を収めたボックスセット『MASTERS OF THE STRINGS』を聴く。
1930年から40年代の録音──つまり著作権切れのもの──なので当然モノラルなのだが、なんといっても、この値段。名のみばかり高い巨匠の演奏を、だいたいランチ2回分の値段で、一網打尽に制覇できるのは嬉しい。

で、最初の一枚は、メニューイン、フーベルマン、エネスコ、シゲティによるバッハの協奏曲集。どれも定番のBWV1041(メニューイン)、BWV1042(フーベルマン)、BWV1043(メニューイン&エネスコ)ときて、ヨゼフ・シゲティ演奏によるBWV1052。
BWV1052? 
そう、これ、通常ピアノかチェンバロで演奏される『クラヴィーア協奏曲第1番ニ短調』なのだ。といっても、この「クラヴィーア協奏曲BWV1052」は──他のクラヴィーア協奏曲同様──もともとは「ヴァイオリン協奏曲」の編曲だとされているのだが、しかし、その原曲である「ヴァイオリン協奏曲」自体は失われてしまっている……と多くの解説書、楽曲紹介に記されているものだ。
このシゲティの演奏が、どのようなヴァージョン/編曲に則ったものかは不明だが──なにしろバジェットプライスのCDなので解説等は一切ない──なるほど、たしかにBWV1052は、ヴァイオリンの特性を生かしたパッセージに彩られているのがよくわかる。
BWV1052はJ・S・バッハの作品の中でもとくに好きなものの一つなので、現代のヴァイオリニストも、この曲にトライしてくれればいいのにな、と思う。


ちなみにヨゼフ・シゲティ/Joseph Szigeti についてウィキペディアでは

20世紀を代表するヴァイオリン奏者のひとり。ミッシャ・エルマンやジャック・ティボー、クライスラーに代表される美音派、ヤッシャ・ハイフェッツに代表される技巧派との比較から、表現性の高い「下手な巨匠」と呼ばれた。

と書かれている。
確かにシゲティのヴァイオリンは「美音」ではないかもしれないが、でも、リキの入ったボーイングの「音圧」には、まさにこのヴァイオリニストならではの圧倒的な魅力があると思うけどな。

また、シゲティに関する著書として『ヨーゼフ・シゲティ  ヴァイオリン練習ノート―練習と演奏のための解説付200の引用譜』と『弦によせて もういちど読みたい』、『ベートーヴェンのヴァイオリン作品―演奏家と聴衆のために』が音楽之友社から出ているようだ。

もういちど読みたい 弦によせて

もういちど読みたい 弦によせて

ベートーヴェンのヴァイオリン作品

ベートーヴェンのヴァイオリン作品