ユング、ユンギアン、そして同性愛

Robert H. Hopcke "JUNG, JUNGIANS & HOMOSEXUALITY" を古本屋にて。

Jung, Jungians and Homosexuality

僕が買ったのは、Shambhala社のペーパーバック。カヴァーにはギリシャ彫刻みたいな男性像が使用されていて、一目で Gay Studies の本だとわかった。

著者はG.G.ユングの研究家で、ユング派の立場から同性愛の理論研究／臨床実践（clinically and theoretically）を行っている。もちろん本書の献呈に”To Paul, with love and to gay men and lesbians everywhere”と書いているように、「彼も当事者」である。そしてサンフランシスコでゲイ＆レズビアン向けのカウンセリング機関「AIDS Prevention Program for Operation」の運営に携わっているという。

とはいえ、多分きちんと読めないし──英語だし──読まないだろうな。何しろ僕はユングが嫌・い・で。だってこんなこと書いてあるんだもん。

ユングは彼の世代にふさわしく、性というものは肉体的と同様に、心理的にも明確に区別されていると信じていた。「ユニセックス」や女性解放には彼はほとんど共鳴しなかったろうし、彼の著作を通じ再々現れるテーマは、大学──ことにアメリカの大学──が女性の人格に及ぼすと彼が思った悲惨な影響のことである。彼はそれらの大学を「アニムス孵卵器」と呼び、その軽蔑的言い回しは、大学は女性を競争的、議論好きにし、男性から譲り受けたものの決して適切に把握されない観念でいっぱいにし、男性の劣った模倣に陥りやすいという彼の確信を暗に示している。
実際アニムスはアニマと違い、ユングの記述においては、むしろひどく扱われているのである。

A・ストー『ユング』（河合隼雄　訳、岩波書店）p.70-71

と、言いたい放題。そして決定的なのが、

彼は男性の同性愛に不寛容なことで名うてだった。

『ユング』p.71

ということ。

ただ、裏表紙にある Advocate の書評の一部にはこんなことが書いてある。

"Robert Hopcke's revolutionary book overthrows traditional Jungian thinking about gay people and proclaims a new version. With lucid thinking and vivid imagery, he portrays an authentic gay individuation, leading to psychological wholeness"

Mitch Walker, The Advocate

ま、ホモフォビアで反フェミなユング研究家に対しは、 Hopcke 氏の著作でもって、「でもアメリカには著名なゲイのユング研究者がいるよ」「ユング理論も変化／進化しているんだよ」と言えるだろう。

A Guided Tour of the Collected Works of C.G. Jung

Robert H. Hopcke 氏の他の著書で興味を惹いたのが、 Laura Rafaty 氏との共著『Straight Women, Gay Men: Absolutely Fabulous Friendships』。ゲイ男性とストレート女性の「友情」についての本らしい。Amazon のあるレヴュアーは『Will and Grace』の関係みたいだと書いている。

Straight Women, Gay Men: Absolutely Fabulous Friendships

また『Same-Sex Love : And the Path to Wholeness』と『Men in Love : Male Homosexualities from Ganymede to Batman』もとりあえずチェックだけしておきたい。ともにユング派の理論で同性間の（友）愛（same-sex love、relationships between men）を論じている。後者は、フロイト〜ユングの手紙からバットマンとロビンの関係まで俎上に挙げられるようだ。

Same-Sex Love: And the Path to Wholeness

Men in Love: Male Homosexualities from Ganymede to Batman