HODGE'S PARROT

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ディオール・オム、2006年春夏はゲイポルノ・イメージで

HODGE2006-02-02




エディ・スリマン(Hedi Slimane)によるクリスチャン・ディオール・オムの2006年春夏コレクション。キャンペーン広告では、70年代(プレ・エイズ時代)のゲイ・ポルノにインスパイアーされたと思しき、ちょっとレトロで、物憂げで、しかしとても誘惑的なイメージが採用されている。

[DIOR HOMME SPRING/SUMMER 2006 MEN'S]


そして、この世界的な人気を誇るメンズ・ファション・デザイナーによる「70年代ゲイポルノ・イメージ」は、トロントで活躍しているアーティストの作品から霊感を受けたのではないか、と話題になっている。
Paul P.。ホモエロティックな作風で知られるカナダ、ハミルトン生まれの28歳の芸術家だ。

Torontonian gives Dior a new look [TORONT STAR]

"I'm not sure where it all began," Paul P. said in an interview earlier this week. He suspects that Slimane saw his images at the Galerie Thaddaeus Ropac in Paris and was inspired to combine their efforts in the spring campaign which was shot by Slimane, a keen photographer. As it turns out, the Paris-based fashion designer and the Toronto artist are remarkably alike.


Slimane, who has been creative director at the LVMH fashion house since 2000, is credited with putting men in skinny, shrunken suits, sexy low-rise rock 'n' roll jeans and gold patent high-heeled boots.


towleroad というブログでは、Dior Homme の広告とPaul P.の作品を比較検討している。モデルは同じ「ミューズ」(美神)だ。

Dior 2006: Hedi Slimane Finds a Muse [towleroad]



ところで『トロント・スター』紙のインタビューで、Paul P.は興味深いことを語っている。彼は20年前、30年前のゲイポルノに「ピンナップ」された若い男性モデルに関心を抱き、それらにインスピレーションを受け、ドローイングや絵画作品へと創作していくのだが、そのポルノグラフィーに関して、エイズ以前以後では「ポルノの雰囲気」が変わった、と指摘する。
つまり「エイズ以後」では、モデルたち──ポルノスターたち──は、あまりにも「健康的」(super-healthy)なイメージに可視化/可塑化している。それは、まるでエイズという多くのゲイの命を奪った/奪っている「病気」から「遠く離れていたい」(distance)という願いがあるのではないか、と。

エディ・スリマン/Paul P.のディオール・キャンペーンイメージに対して、「モデルが痩せ過ぎ」だという意見を他のブログで見たが、たしかにこれらは「健康的」なイメージではないし、どことなく「屈折した」雰囲気がある。もちろん現在の「主流の」ゲイ・ポルノに見られるようなマッチョで健康的でスポーティな感じとはまるで違う。しかし「エイズ以前」のポルノグラフィーには、もっと多様な「欲望の表現」が求められ、そして多様に消費されていたのではないか、と感じる。




[Paul P. 関連サイト]

[HEDI SLIMANE OFFICIAL WEB SITE]

Stage

Stage

Hedi Slimane: Intermission 1

Hedi Slimane: Intermission 1

Hedi Slimane: London Birth of a Cult

Hedi Slimane: London Birth of a Cult