僕の持っているゲイリー・グラフマンとセル&クリーヴランド管弦楽団によるプロコフィエフのピアノ協奏曲第1番、3番(それとピアノソナタ第3番)の「メディア」はアナログレコード。レーベルはCBS・ソニー。
そしてこのLPレコードの「音質」における特徴は、「SX68サウンド」なるものだ。
SX68サウンドは、CBSソニーの”新しい音”のシンボル・マークです。鮮鋭な音の解像力、ゆとりのあるダイナミック・レインジ、高S/N比、良好なステレオ・プレゼンスを生みだす西独ノイマン社製最新型カッティング・ヘッドSX-68によりカッティングされたレコードのみ、SX68サウンドがマークされます。
たしかに、さすがは「西ドイツの技術」だけあって、音はとてもクリアー、プレゼンスは良好、「定位」は明瞭、ソロピアノは生々しく、オケも広がりとゆとりを感じさせる絶好のサウンド。録音は1966年だが、まったく古さを感じさせない。グラフマンの豪快なテクニックとオーケストラの「性能」を堪能できる。
ところで、このLPの解説は松平朗という人が書いている。これが情報量があるだけではなく、文章がなかなか面白いのだ。のっけから「プロコフィエフという作曲家は、愛聴されることはあっても、学術研究の対象にされることはあまりないような気がする」で始まり、
プロコフィエフの作品というのは、まことに輝かしい効果に満ち、それは些か騒々しくはあっても、適切なグロテスクさと快い野蛮さ、うまく胡椒のきいたリズムがある。また一方では、例えば、裕福であり結構高等教育も受けているのだが、どうしても下層民の出身であることをその容貌から拭いされない成金が持っているようなスノビズム、そういうものもある。その他には、そういう人が懸命になってこね上げてみせるソフィスティケーションのようなものもある。しかも或る種の独創性も間違いなく存在する。
要するに、聴く人を惹きつけるのに必要なだけのもの、魅力と同時に反感させもちゃんと持っている。
そういえば「アカデミック」なピエール・ブーレーズは、プロコフィエフへの「反感」を隠さないし、自分はプロコフィエフを演奏しないとどこかで語っていたな。ま、僕は、3番協奏曲やソナタ7番、『トッカータ』、『悪魔的暗示』のようなプロコフィエフの持つ「快い野蛮さ」──そのグロテスクさと騒々しさこそが──大好きだけど。
- アーティスト: クリーヴランド管弦楽団,プロコフィエフ,セル(ジョージ),グラフマン(ゲイリー)
- 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックレコーズ
- 発売日: 2000/08/23
- メディア: CD
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さらにところで……。この解説を書いている松平朗氏は、日本ヴィェニァフスキ協会理事、日本シマノフスキ協会理事の松平朗氏と同じ人なのだろうか。
あるいは、『前立腺の病気と予防』という大森一樹監督映画で音楽を担当した人とはどうなのだろう。
- 前立腺の病気と予防(1981) [goo 映画]