HODGE'S PARROT

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ホロヴィッツの『展覧会の絵』

これもアナログレコードで聴く。1951、1953年のカーネギーホールの実況録音が中心になっているアルバム。レーベルはRCA(RVC)。モノラル録音。


スクリャービンホロヴィッツの18番だけあって、それは甘美で妖しくて素晴らしいのだが、なんといってもこのアルバムでは『展覧会の絵』だな。このホロヴィッツ編曲による超絶技巧『展覧会の絵』には度肝を抜かれる。あの「バーバ・ヤガー」から最後の「キエフの大門」への盛り上がりはいったい何だ? ピアノって暴力的な楽器だと、つくづく思う。

即興という言葉を頭の片隅に置いていただけるなら、演奏とは、単純な話、一回ごとの編曲作業である。ホロヴィッツの変化に富んだ演奏を聞いていると、編曲作業のまっただなかに放り出され、聞き知った曲という慣れに基づく安定感をうばわれて手に汗握り聴き込んでいる自分にハッとすることが多い。
ホロヴィッツにヴィルトゥオーソという言葉が用いられる場合、ただ指の回転速度や表情の巾振の大きさへの比例関係でのみ理解されるべきではないのだ。名技性は、ここでは聴き手の手の汗とも結び付き、演奏家のひたいの汗を消し去ってしまう。《展覧会の絵》に特別に記載された『ホロヴィッツ編』の編の字は、先の編集作業の編と相互に関係しあうのであり、音楽よりもテキストを好む学者潔癖主義の精神とあい入れない。




吉田耕一 レコード解説より

Mussorgsky;Pictures at An E

Mussorgsky;Pictures at An E