HODGE'S PARROT

はてなダイアリーから移行しました。まだ未整理中。

シルヴェール・ロトランジェ

高祖岩三郎『巷のドゥルーズ──あるいは「活動」から「運動」への途』に登場する雑誌『セミオテクスト』と叢書「フォーリン・エージェント」の仕掛け人シルヴェール・ロトランジェ(Sylvere Lotringer)。どんな人なのかな、と思っていたら、浅田彰との対談「アメリカは退屈で死に、日本は虚無をぬくぬくと生きる」で面白いことを語っていた人だった。

浅田 あなたがアメリカのセックス・セラピーを扱った近著『過剰露出』の中で飽和と退屈に焦点を当てているのはそのためですね。


ロトランジェ ええ。それはまた権力を性をめぐるフーコーの理論への間接的なコメンタリーでもあります。実際、フランスで権力が何かをすることを禁じるとすれば、アメリカでは権力は何かをとことんやるように仕向ける。性もそのために使われます。五〇年代の終わりに、禁止に基づくピューリタン的な社会から消費社会への転換が生じると、性は商品化すべき資源としてのみならず、自己を定義する手段としても、表立って使われるようになる。だれもが自己を語るつもりで、絶えず性のことを大っぴらに語りつづけるわけです。


浅田 性と真実と主体の不可分な結びつきですね。


ロトランジェ その結びつきは、しかし、ただちに空洞化される。性は主体の内に秘められたものとされながら、その実、コミュニケーションの手段でしかないわけで、そこには発見される真実などないのです。
こういう傾向をつきつめたのが、ある種のセックス・セラピーです。そこでは、異常性格とされる性犯罪者を「治療」するのに、抑圧ではなく反復と飽和をもってします。「患者」にペニスの膨張や瞳の動きを計測する器具を取りつけ、強姦なら強姦の映像を繰り返し繰り返し見せつける(笑)。毎日数時間の自慰を強制し、しかもその間中、妄想の内容をテープ・レコーダーに向かって語らせる(笑)。時にカフカ的、時にバロウズ的な悪夢です。


浅田 カフカの「流刑地」(ビーナル・コロニー)は「陰茎地」(ビーナイル・コロニー)となり、「受刑者」は快楽を強制される(笑)。


ロトランジェ 事実、これは監獄に代わる制度です。逆に言うと、アメリカの「自由社会」全体が、こういうソフトな監獄に見えないこともない。




浅田彰『「歴史の終わり」を越えて』(中公文庫)p.236-237

それと”[本]のメルマガ”にも詳細な紹介があった。

ロトランジェの17歳年下の妻でニュージーランド出身の映像作家クリス・クラウスってのも凄そうだ。


「歴史の終わり」を超えて (中公文庫)

「歴史の終わり」を超えて (中公文庫)

Hatred of Capitalism: A Semiotext(e) Reader (Semiotext(e) Journal)

Hatred of Capitalism: A Semiotext(e) Reader (Semiotext(e) Journal)

  • 作者: Chris Kraus,Sylvère Lotringer,Eileen Myles,Assata Shakur,Jean Baudrillard,Ulrike Meinhof,Nina Zivancevic,Alain Joxe,Kathy Acker,Georges Bataille,Hélène Cixous,David Rattray,Paul Virilio,John Cage,Bob Flanagan,Lynne Tillman,Gilles Deleuze,Félix Guattari,Jane DeLynn,Jean-François Lyotard,Jack Smith,Fanny Howe,Louis Wolfson,Frédéric Rossif,Guy Hocquenghem,Michel Foucault,Michelle Tea,Chris Marker,Kate Millet,Tisa Bryant,William S. Burroughs,Cookie Mueller,Ann Rower,David Wojnarowicz
  • 出版社/メーカー: Semiotext(e)
  • 発売日: 2001/05/01
  • メディア: ペーパーバック
  • クリック: 1回
  • この商品を含むブログ (1件) を見る
The Accident of Art (Semiotext(e) / Foreign Agents)

The Accident of Art (Semiotext(e) / Foreign Agents)

Foucault Live: Collected Interviews, 1961?1984 (Semiotext(e) / Foreign Agents)

Foucault Live: Collected Interviews, 1961?1984 (Semiotext(e) / Foreign Agents)