HODGE'S PARROT

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シュワルツェネッガー知事、同性婚法を拒否



アーノルド・シュワルツェネッガー州知事は、カリフォルニア州上下両院において成立した同性婚法への署名を拒否することを表明した。

VETO A day after Assembly’s OK, Schwarzenegger pledges to kill same-sex marriage bill GOVERNOR'S STAND: Decision to honor Prop. 22 sure to please conservative core [SF GATE]

"The governor believes the matter should be determined not by legislative action -- which would be unconstitutional -- but by a court decision or another vote of the people,'' said Margita Thompson, Schwarzenegger's press secretary. "We cannot have a system where the people vote and the Legislature derails the vote. Out of respect for the will of the people, the governor will veto AB849.''


Democrats said they weren't surprised by Schwarzenegger's announcement but were disappointed, especially by the speed of the decision.


"For a man who claims rather grandiosely to be 'following the will of the people' when he doesn't even allow the people to express his will to them as he does with every other bill is a deep disappointment to me," said state Sen. Sheila Kuehl, D-Santa Monica.


Condemnation from gay and lesbian rights activists was swift.


"Who's the girly man now?" said Kate Kendell, executive director of the National Center for Lesbian Rights. "... Real courage and real leadership and real strength and real protection of those who are marginalized by the law should have come at hands of a governor who prides himself in his strength of leadership and his boldness."


そして、alfayokoさんのTransNews では、ニューヨークタイムズ紙の社説の邦訳が掲載されています。ぜひ目を通してもらいたいと思います。

ニューヨークタイムズ社説「Governatorは、どこにいった?

彼は、イチジクの葉(自分に不都合なものを隠す覆い)に頼っている。5年前、カリフォルニアの住民は、異性結婚だけを認めた提案を圧倒的な大差で支持した。知事のプレスオフィスの声明は述べる、「我々は、住民が投票し、議会がその意思を無視するようなシステムは持っていない」と。


それは、5年という年月が、最近の同性愛者の権利向上の速い動きからみて、とてつもなく長い時間だったという事実を無視している。たとえ5年前に有権者の61パーセントが(同性婚を禁止する)提案を承認していたとしても、最近の世論調査は、同性婚に賛成する民主党員や無党派と、それに強く反対する共和党員に、ほぼ有権者が二分されていることを示している。議会が世論を大まかに反映している以上、議会が住民を裏切ったとはいえない。


シュワルツェネッガー氏も、わが国が共和国として建国された事実を忘れたようである。そこでは、市民は彼らを代表する議員を選ぶ。そのような代表制民主主義は、有権者の一部から偏屈な敵意に直面するかもしれない、少数派の基本的な権利を保護するために重要である。

まあ、予想されていたこととはいえ、上下両議会で承認された「市民権」に対して拒否権を発動する/発動できるということは、アメリカの政治システムに問題があると言わざるを得ない。
たしかに、一般的に、立法と行政の「抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)」という観点から「拒否権(VETO)」の発動は、ときに有効な場合もあるだろう。しかし「(基本的な)人権を抑制」するために、発動される/できる拒否権の存在は、「デモクラシーを掲げる共和国」の名を廃らせる。

法律の制定が一年間遅れただけで、どれだけ多くの(老齢の)同性カップルが死別するかもしれないということを、そしてゲイやレズビアンの少年・少女が「市民権/人権を奪われるという屈辱」をどのように味わっているのか。オーストリア出身のドイツ系州知事には、真正に、考えてもらいたい。

第二次世界大戦勃発時、デリダは9歳、フランス降伏とヴィシー政権成立直後に10歳になる。第一次大戦の英雄ペタン元帥を首班とするヴィシー政権は、大革命以来の共和主義的フランスを否定する「国民革命」を掲げ、いくつかの点ではドイツより過酷といわれる反ユダヤ法を制定し、ユダヤ人狩りを行って強制収容所に送りこむなど、ユダヤ人迫害政策を実行した。


アルジェリアユダヤ人を直撃したのは、40年10月7日のクレミュー法の廃止であり、これによって、70年間認められてきたユダヤ人の公的諸権利が今度はまるごと剥奪されることになったのである。デリダはこの件に触れて、ほぼつぎのようなことをいっている。個人なら別だが、ある民族的ないし宗教的集団が事前にまったくの意見も聴取されず、ある日突然国家によって一方的に市民権を剥奪され、かつ「当該集団が他のいかなる市民権をも回復しない」というケースがかつてあっただろうか? 


しかもこの措置は、ドイツ人占領者によってとられたのではなく、ドイツ人の介入や要求はいささかもないまま、もっぱらフランス当局が決定し、フランス人によってとられたのである。「アルジェリアではドイツ軍の制服はまったく見られなかった。どんなアリバイも、どんな否認も、どんな幻想もありえない。この排除の責任を外国人占領者に転嫁することは不可能だったのだ」(『他者の一言語使用』)。


歴史家は、市民権の剥奪はアルジェリアユダヤ人たちに「深い屈辱」を味わわせた、と書いている。



高橋哲哉デリダ』(講談社)p.19-20

デリダ (「現代思想の冒険者たち」Select)

デリダ (「現代思想の冒険者たち」Select)