HODGE'S PARROT

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13歳少女、学校での同性愛嫌悪を苦に自殺



イギリスの女子生徒が、学校でのいじめを苦に自殺した。彼女は学校で、同性愛嫌悪による揶揄・侮蔑、憎悪発言を受けていた。

Pupil suicide over homophobic bullying [Gay.com UK]

The death comes as awareness of homophobia in schools continues to rise.

記事によると、自殺した少女はローラ・ロードス(Laura Rhodes)さん。13歳であった。ローラさんの母親によると、ローラさんは学校で、度重なるアンチ・ゲイに基づく「行為」(愚弄、揶揄)に晒されていた。
学校でのいじめはあまりにも酷くて、娘はそこから──学校における同性愛嫌悪の<環境/循環>から──「逃れることができない/身動きが取れない」(felt trapped)状況にあったと、ローラさんの母親は述べた。

ローラは、もし他の学校に通っても「同じ状況」に晒されるのではないかと、恐れていた。

そしてローラさんは、母親に、

この世は生きている価値がない
"life is not worth living".

と何度も打ち明けていた。

この少女自殺の事件に関連して、記事では、学校におけるホモフォビアのため、ゲイやレズビアンの子供たちが、登校拒否などの事態に陥ることが懸念されている。

Forty per cent say they fear anti-gay bullying will continue if they stay in education, while 75% of lesbian and gay pupils suggest they play truant to avoid school.

こういった学校における同性愛嫌悪に対して、英政府は、ゲイやレズビアンバイセクシュアルの生徒を守るための対策を打ち出していることは、以前のエントリーでも書いた。

英政府、学校におけるアンチ・ゲイ暴力へのガイドライン公示
また、アメリカでも同様の事態が──こちらは少し年齢が上がって高校生対象だが──発表されている。
米高校生の5%が同性愛者、40%が暴力の被害を経験

上記のエントリーは、同じ時期に書いたため、両エントリーとも川原泉ヘイトスピーチを「問題化」している。そこで「問題」にしているのは、川原が「子供が見る」マンガにヘイトスピーチを「書き込んだ」こと。つまり「ホモ」という<蔑称>を使用し、さらにそこに「倒錯」や「バイキン」という「明らかに悪意のある<言葉>」を<接続>しているからだ。
こういったことは、日本における同性愛差別の現状を、表象=代表(リプレゼント)していないだろうか。なぜ、同性愛差別がなくならず、侮蔑語の使用が看過され、なぜ差別・侮蔑・愚弄が繰り返され続けるのか。


差別の<生成/反復>に関して、興味深い記事を見つけたので記しておきたい。
ノーフューチャー・バット・チルドレン・ネバーダイ [CLick for Anti War 最新メモ]
こちらの方のエントリーは在日外国人差別を扱っているものだが、日本独特の「陰湿な差別形態」を「問題化」するための示唆を与えてくれる。

ここで避けなければならない誘惑は、「公然と自分の(人種差別的、反同性愛的)偏見を認めている敵の方が、人は実は密かに奉じていることを公には否定するという偽善的な態度よりも扱いやすい」という、かつての左翼的な考え方である。
この考え方は、外見を維持することのイデオロギー的・政治的意味を、致命的に過小評価している。外見は「単なる外見」ではない。それはそこに関係する人々の、実際の社会象徴的な位置に深い影響を及ぼす。人種差別的態度が、イデオロギー的・政治的言説の主流に許容されるような姿をとったとしたら、それは全体としてのイデオロギー的指導権争いの釣り合いを根底から変動させるだろう。
(中略)
今日、新しい人種差別や女性差別が台頭する中では、とるべき戦略はそのような言い方ができないようにすることであり、それで誰もが、そういう言い方に訴える人は、自動的に自分をおとしめることになる(この宇宙で、ファシズムについて肯定的にふれる人のように)。「アウシュヴィッツで実際に何人が死んだのか」とか「奴隷制のいい面」は何かとか「労働者の集団としての権利を削減する必要性」といったことは論じるべきでないことを強調しておこう。
(中略)

したがって、フーコーのように、権力は反権力と分かちがたく結びついており、反権力を生み、それ自身が反権力に規定されている、つまり、自己反射的に、この分裂はつねにすでに権力構造そのものにはね返ってきて、それを内部から分断し、自己検閲の身振りが権力の動きと同質になると断じるだけでは十分ではない。さらに、あるリビドーの内容の「抑圧」が遡行的に、まさに「抑圧」する身振りをエロス化すると言うだけでも十分ではない──この権力の「エロス化」は、それをその対象に行使することの二次的効果ではなく、否定されてはいても実はその基盤なのであり、「根幹をなす犯罪」であり、権力が正常に機能するとすればいつまでも見えないままでいなければならない創始の身振りである。


スラヴォイ・ジジェク『幻想の感染』(松浦俊輔訳、青土社


このローラ・ロードスさんの自殺については、ゲイ・メディアのみならず、BBCやガーディアンでも詳細が報じられ、イギリスで大きな問題になっているようだ。

Schoolgirl overdose was suicide [BBC NEWS]
Legal threat to 'bullying' school [BBC NEWS]
ローラ・ロードスさんは、「友人」のレベッカ・リングさんと一緒に服毒自殺(多分睡眠薬などの過剰摂取)を図った。レベッカさんは一命を取り止めた。

School cleared of blame over suicide of girl, 13 [Gurdian]
ガーディアンでは「学校の責任」を「問題化」している。

Dr John Talbot, a child psychiatrist commissioned by the coroner to examine the relationship between the two girls, said that they had become "extremely close emotionally", with an intensity which would have made it difficult to get help and support.

He said the girls' dread of separation would have been compounded by other fears of homophobia and punishment.


大衆紙ミラーは、多分に情に訴える書き方だが、ローラさんのセクシュアリティについても書いている。
MUM TELLS OF 4AM CALL AFTER GAY TAUNTS GIRL'S DEATH PACT WITH PAL [Mirror]

Laura, who believed she was gay, died two hours later in hospital. Her friend survived. Yvonne wept as she said Laura had left a note: "She expressed her love for us and her elder brother Andrew and that she and her friend didn't want to be apart."

Laura and her 14-year-old friend had met months earlier in an internet chatroom.