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イギリスの情報外交

イギリスの情報外交 インテリジェンスとは何か (PHP新書)

イギリスの情報外交 インテリジェンスとは何か (PHP新書)

「インテリジェンス」という観点から、イギリスの外交政策を分析する。

イギリスには以下のような諜報機関がある/あった。スパイ映画でも有名な英国秘密情報部(MI6)、軍部情報部の中の陸軍情報部(MI2)、海軍情報部(NID)、英空軍情報部(AID)。内務省保安部(MI5)、極東統合局(FECB)、そして政府暗号学校(GS&CS)など。

また、情報収集活動には、人的情報源(HUMINT)と通信情報(SIGINT)の二つに大別できる。すなわちスパイ(エージェント)を利用したものと、通信傍受・暗号解読(例えば、ドイツの「ENIGMA」や日本の「紫暗号」)によるもの。

イギリスは日英同盟時代から同盟国日本の外交通信を盗読していたことになるが、平時の情報収集を怠らないことはインテリジェンスの基本である。

「インフォメーション」が単に「情報」であるのに対し、「インテリジェンス」は情報活動による収集、分析を通して知性の裏付けを得た「情報」のことだ。
例えば、国家におけるインテリジェンス活動とは、情報の収集(Collection)、分析、評価(Analysis and Evaluation)、そして情報の利用(Utilization)までの一連の過程を内包している。

重要なのは、これらの機関を通して得られた「インテリジェンス」が、いかに統御・分析され、「ホワイトホール(政官庁街)」へと正確に迅速に到達するか、そしてその「情報」をいかに利用可能なものにするか、だ。
「情報」は熾烈な外交交渉や自国・相手国へのプロパガンダにも利用される。

このような各紙の報道は、イギリス政府の情報操作によるものであったと考えられるが、これらの大々的な反日プロパガンダは、日本の南進を抑制するのにかなりの効果を発揮したようである。特に危機感の鼓舞がアメリカの注意を極東に引きつけた、という認識を日本側に植え付けたことが大きかった。
また日本においては朝日新聞などがこの『タイムズ』紙の論調を取り上げ、「極東危機切迫に英の朝野怯ゆ」と報道している。そしてこのように加熱した報道が、一般に「二月極東危機」と呼ばれる現象となったのである。

著者は、1940年から41年におけるイギリスの対日政策を通して、「インテリジェンス」が果たした役割を提示する──もし、日本があと半年早くイギリスを攻撃していたら、大英帝国は崩壊していたかもしれない、その危機を回避できたのは「インテリジェンス」とそれを利用した外交によるものである、と。