HODGE'S PARROT

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ヴァントゥイユの小楽節

サン=サーンスのヴァイオリン・ソナタを聴く。プルーストは『失われた時を求めて』の「ヴァントゥイユのヴァイオリン・ソナタ」で、このサン=サーンスの音楽をイメージしたという。
ヴァイオリンはオリヴィエ・シャルリエ、ピアノはジャン・ユボー
ユボーはフォーレの演奏が有名で他にもいろいろとCDが出ているが、シャルリエはこのサン=サーンスの録音しか知らない。素晴らしいヴァイオリニストだと思うのだが。

ソナタはピアノとバイオリンで演奏された。プルーストは極めて詳細に「小楽節」についてのスワンによる記号論化作用のさまざまな局面を列挙している。
──初めのうち唯一感じされたものは「楽器から滲み出てくる音の物質的な性質」である。
──続いて彼はピアノ部分から成る大きい部分をよりよく捉えることができるようになる「ピアノの調べ、月光に美しく照らされ変調された波の赤紫色(モーブ)のたゆたいのように、さまざまな形の、うちつづいた、平らな、搏ち合うピアノの調べ」
──ある徐々に薄れゆく音楽形式が現れはじめるが、その輪郭を固定することも、それが旋律的な楽節なのかそれとも和声なのか決定することさえもできない。


フェリックス・ガタリ『機械状無意識』(高岡幸一訳、法政大学出版局

サン=サーンス:室内楽作品集

サン=サーンス:室内楽作品集