HODGE'S PARROT

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book

地獄よ、おまえの勝利はどこにあるのか? 〜 ブラームス《ドイツ・レクイエム》

ヨハネス・ブラームスの《ドイツ・レクイエム》(Ein deutsches Requiem、A German Requiem)Op.45 を聴いた。Requiemアーティスト:Blomstedt,San Francisco Symphony発売日: 1995/05/16メディア: CD この「レクイエム」(死者のためのミサ曲)は、ブラーム…

スペインで戦った日本人

BBCのテレビドラマ『ケンブリッジ・スパイズ』(Cambridge Spies)のDVDが届いたので、早速観ているところ。ガイ・バージェス、キム・フィルビー、アントニー・ブラント、ドナルド・マクリーンら「英国を裏切った」スパイたちの活躍を、BBCが英国の人気俳優…

R・A・ラファティ『クロコダイルとアリゲーターよ、クレム』

以前、書店で『九百人のお祖母さん』という本を見かけたことがある*1。カヴァーのイラストが強烈で目を引いた。でもSFの人か……と、その時の僕は思い、本を戻した。 その R・A・ラファティ(R. A. Lafferty、1914 - 2002)の短編が『ミステリマガジン』に載っ…

アベル・ユーゴー『死の刻』

フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの兄、アベル・ユーゴー(Abel Hugo、1789 - 1855)の短編小説『死の刻』(L'Heure de la mort)を読んだ。やはり『ミステリマガジン』に収録されていたものだ──それにしても、この雑誌のセレクトのセンスはさすがだな、…

Juste pour une nuit

アベル・ユーゴーってフランスではどうなんだろう(仏Wikipediaにアベルがなかったので)と、仏Amazon にアクセスしたら……先日、フェリス・ピカーノを検索したからだろうか、トップページがゲイ関連の本やDVDで溢れていた(笑)。 その中の一冊、Zaïn Gadol …

トマス・M・ディッシュ&ジョン・スラディック『無神論者の契約』

書棚を整理していて目に入った『ミステリマガジン』1996年1月号(No.478)──「異色短編特集 悪魔と契約!?」だった。お、と思って、その中の一編、トマス・M・ディッシュ(Thomas M. Disch、1940 - 2008)とジョン・スラディック(John Thomas Sladek、1937…

マイケル・ブラムライン『ラットの脳』

本業は外科医であるマイケル・ブラムライン/Michael Blumlein の『ラットの脳』(The Brains of Rats、1988)を読んだ。短編集『器官切除』(白水社)に収録されている。本の帯には「『SFマガジン』ベスト10 ランクイン!」とか「J.G.バラードに最も近いと…

フェリス・ピカーノ 〜 THE NEW JOY OF GAY FICTION

やっと時間が取れて、ネットで本の情報を得て、それを「はてなブックマーク」のコレクションに加えようとしていた──もちろんカヴァー中心のセレクト、もちろん(見ればわかるように)ゲイ関連の本だ。 Like People in Historyhttp://www.amazon.com/dp/01402…

クイウス・レギオ、エイウス・レリギオ

ローマ・カトリック教会の歴史作者: エドワードノーマン,百瀬文晃,Edward Norman,月森左知出版社/メーカー: 創元社発売日: 2007/12/01メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (5件) を見るエドワード・ノーマン著『ローマ・カトリック教会の歴…

ヴィヴァルディ《スターバト・マーテル》を聴いて

Sacred Music - 2アーティスト:Vivaldi,Smith,Newman,Aradia Ens,Mallon発売日: 2006/05/16メディア: CD アントニオ・ヴィヴァルディの《スターバト・マーテル》RV.600 が、これほど悲哀に満ちて、そしてこれほど美しいとは思っていなかった。《四季》や、ヴ…

GJ! ヘレン・マクロイの『幽霊の2/3』が新訳で!

あの幻のミステリー、ヘレン・マクロイ(Helen McCloy、1904 - 1994)の『幽霊の2/3』(Two-Thirds of a Ghost、1956)が新訳で創元推理文庫より刊行される。via.BaddieBeagle さんより。Two-Thirds of a Ghost by Helen McCloy / Vintage Mystery Covers […

記憶屋ジョニー

先日、ロバート・ロンゴ/Robert Longo と「スーツ・ノワール」についてちょっと書いたが……そうだ、ロンゴといえば、彼が映画監督として撮った映画を観た記憶が甦った。『Johnny Mnemonic』(ジョニー・ネモニック)、略して『JM』。ウィリアム・ギブスン(W…

ぼくはお城の王様だ

セルゲイ・プロコフィエフというと……なんといってもピアノ協奏曲第3番ハ長調 Op.26 だ。あの超絶技巧のピアノ──音符が多くて音を拾うだけでも苦労するのに、そこにさらに、複雑なリズムとスピード、そして、なにより力(腕力)が要求される。そして、なにや…

異邦人たちの慰め

ビデオで観たときの邦題は『迷宮のヴェニス』だった。イアン・マキューアンの小説『異邦人たちの慰め』(The Comfort of Strangers)をポール・シュレーダーが監督した映画は。脚本はハロルド・ピンターであった。 Comfort of Strangers Trailer - Christoph…

Less Than Zero

ブレット・イーストン・エリス(Bret Easton Ellis、1964)といえば、『レス・ザン・ゼロ』が好きだった。ストーリーよりも、あの雰囲気。何も起こらないことへの不安。曖昧な罪の意識。 ああ、哀れなる紳士よ 若き日の面影はすでになく 零落した敗残の身を…

パスカル・デュサパン『作曲のパラドックス』

フランスの作曲家パスカル・デュサパン(Pascal Dusapin、b.1955)による『作曲のパラドックス』を読んだ(再読)。この本は、以前も書いたように、コレ―ジュ・ドゥ・フランスの開講講義の講義録で、このときデュサパンはコレ―ジュ・ドゥ・フランスの教壇に…

福音的背理主義/Evangelical Irrationalism

アリスター・マクグラス(Alister McGrath、b.1953)の『ポスト・モダン世界のキリスト教 21世紀における福音の役割』より、宗教改革の思想とそこから導き出される神学者のスタンスについて論じている部分をメモしておきたい。マクグラスは北アイルランドの…

信頼

ヴォルフハルト・パンネンベルク(パネンベルク)による〈信頼〉についての考察もメモしておきたい。ただ、パンネンベルクは、とりたてて特別なことを言っているわけではない。ごくあたりまえのことを述べているように思える。しかしそれがとても新鮮に聞え…

愛による法 〜 ヴォルフハルト・パンネンベルク

ドイツの神学者(宗教哲学、組織神学)ヴォルフハルト・パンネンベルク(Wolfhart Pannenberg、b.1928 -)の『人間とは何か──神学の光で見た現代の人間学』より第八章「愛による法」についてメモしておきたい。 パンネンベルク(パネンベルク)は、現在はポ…

死の海を泳いで スーザン・ソンタグ最後の日々

デイヴィッド・リーフ著『死の海を泳いで スーザン・ソンタグ最後の日々』が上岡伸雄 訳で3月下旬に岩波書店から出るようだ。悪漢と密偵さんより。著者のデイヴィッド・リーフ(David Rieff、b.1952-)は、アメリカのシンクタンク World Policy Institute (W…

ミトロプーロスとロイプケのピアノソナタ

久しぶりにディミトリ・ミトロプーロス作曲のピアノソナタを聴いてみた。フランスのダンテ・レーベルから出ていたジェフリー・ダグラス・マッジ/Geoffrey Douglas Madge による演奏で、これが初めての全曲演奏のレコーディングであった(DANTE PSG9010)。…

ヒトラー暗殺を企てた牧師、ディートリッヒ・ボンヘッファー

村上伸 著『ボンヘッファー』を読んだ。ドイツのルーテル派教会の牧師・神学者ディートリッヒ・ボンヘッファー(Dietrich Bonhoeffer、1906 - 1945)の生涯とその思想について書かれたものだ。「ボンヘッファーとは何者か」──このプロテスタント牧師の持つ三…

ハイドン 《十字架上のキリストの最後の7つの言葉》

Haydn: the Seven Last Wordsアーティスト: Joseph Haydn,Nikolaus Harnoncourt出版社/メーカー: Elatus発売日: 2003/11/10メディア: CD クリック: 10回この商品を含むブログ (1件) を見る没後200年のメモリアル・イヤーにあたる、ヨーゼフ・ハイドン(Josep…

「シューマンにおける油絵風石版印刷調のものの混在」って何だろう?

ロベルト・シューマンについて書かれたものはできるだけ目を通すようにしている。それら「シューマン論」が、僕にとって、納得のいくものであることも、そうでないことも、もちろんあるのだが。ただ、次のアドルノの文章は、どうしても意味がわからない。 マ…

シグナルからシンボルへ 〜 トッカータのフーガ(ホ短調、BWV914)より

「フーガの何たるかも、簡単に説明したい」(ダグラス・R・ホフスタッター)……というより昨日書いた、僕の大好きなヨハン・セバスティアン・バッハの《トッカータ ホ短調 BWV914》のグッドな演奏が YouTube にあったので貼っておきたくなった。聴いてね。 …

徹底してフィロゾフィーレンせよ! 〜 オーストリアの哲学教育

島崎隆 著『ウィーン発の哲学 文化・教育・思想』より、第二部 ”オーストリアの教育と「哲学すること」” についてメモしておきたい。そのタイトルのとおり、オーストリアの学校教育に関する考察だ。 もともと僕がこの本を手に取ったのは、第三部の”「オース…

われもまたアルカディアにありき 〜 『回想のブライズヘッド』

岩波文庫より、小野寺健 訳のイーヴリン・ウォー『回想のブライズヘッド』(Brideshead Revisited, The Sacred & Profane Memories of Captain Charles Ryder 、吉田健一 訳では『ブライヅヘッドふたたび』)が出た。僕にとって、グッとくる小説だ。回想のブ…

カンタベリー大主教、9月に来日

”米大統領就任祈祷、リック・ウォレン牧師選出でリベラル反発” という記事で、リチャード・D・リック・ウォレン牧師/Rick Warren がバラク・オバマの就任式で祈祷することをいち早く伝えた『クリスチャントゥデイ』なので、米国聖公会のジーン・ロビンソン…

"もちろんタンタンはゲイだ、スノーウィーに問うてみたまえ"

ベルギーの著名な新聞記者タンタン氏(Tintin、b.1929)はゲイではないのか、という情報が世界中を駆け巡っている。相棒のスノーウィー氏(英 Snowy、仏 Milou)にも証言が求められたようだ。 7s7 Culture - "Tintin était-il gay? Demandez à Milou!" via k…

「シューベルトの」幻想 / White on White

やっぱり……アドルノって嫌いかもしれない(笑)。 最後の休みなので──昨日はバーゲンで疲れたので──今日はじっくりと大好きなシューベルトの音楽を聴いた。 まずは、ルノー&ゴーティエ・カプソンとフランク・ブラレイによる《ピアノ三重奏曲》。Schubert: P…